ランクルもプラドも絶好調なのに……三菱 パジェロだけがなぜ衰退したのか?

■ジムニーランクル人気は原点回帰が要因! ラングラーはポロと並ぶ販売台数に

 もともとSUVは、悪路を走る機能を備えるクルマとして誕生したが、道路の整備が進むと、悪路を走破する機会は減った。その結果、野性的な外観のカッコ良さと、ワゴンスタイルによる車内の広さがSUVの魅力になり、乗用車と同じプラットフォームを使うシティ派SUVが増えた。

 近年では2WDを中心に、シティ派SUVが大量に販売され、飽食気味になっている。その結果、ジムニー、ランドクルーザー、同プラドのような2WDを設定しない悪路向けのSUVが、いわば原点回帰として注目されるようになった。

 同様の傾向が輸入車にも当てはまり、2021年の輸入車販売ランキングを見ると、ジープ・ラングラーが上位に入る。メルセデスベンツAクラスを上まわり、フォルクスワーゲンポロと同等の台数を販売した。従来ならば、ジープブランドで悪路向けSUVのラングラーが販売の上位に入ることなど、考えられなかった。

■今はなきパジェロの初代モデルが市場を激変させた! ほかのモデルも続々追従

2019年4月登場の三菱 パジェロ特別仕様車「ファイナルエディション」
2019年4月登場の三菱 パジェロ特別仕様車「ファイナルエディション」

 以上のような今のSUV事情を踏まえると、残念なのがパジェロの廃止だ。2019年4月に特別仕様車の「ファイナルエディション」を設定して、同年に生産と販売を終えた。

 この後、アウトランダーは現行型にフルモデルチェンジされて注目度を高めたが、後輪駆動をベースにした4WDを備える三菱の悪路向けSUVは日本では販売されていない。なぜパジェロは廃止されたのか。

 パジェロの過去を振り返ると、初代モデルを1982年に投入してヒット商品になった。当時のSUVは、森林で使われる作業車だったが、パジェロの投入で流れが激変。

 1950年代から用意されていたランドクルーザーも乗用車感覚を強め、1980年代の中盤以降は、トヨタならハイラックスサーフ、日産はテラノ、いすゞはビッグホーン、ダイハツはラガーなど、悪路向けのSUVが堅調に売られていたのだ。

 ビッグホーンの登場は1981年だから、パジェロよりも早かったが、注目されたのは1982年以降だ。それだけ初代パジェロの影響力は大きかった。

■販売台数はライズ並!? 高価格帯なのにオプションもバカ売れした2代目パジェロ

 そしてパジェロは1991年に2代目へフルモデルチェンジする。初代からの乗り替え需要もあって売れ行きを伸ばし、1992年には約8万4000台(1か月平均で約7000台)が登録された。この販売実績は今日のライズと同等だ。

 しかも当時からパジェロは価格が高く、売れ筋になる上級グレードのエクシードやスーパーエクシードは350~400万円に達した。ガードバーやフォグランプなどのディーラーオプションも多く売られたから、三菱と販売会社は、パジェロの好調な売れ行きによって大いに儲かった。

■デカくなった3代目モデルから失速……ハリアーなどシティ派モデルが台頭へ

1999年登場の3代目パジェロ。大型化とシティ派SUVの登場により人気にかげりが見え始めた
1999年登場の3代目パジェロ。大型化とシティ派SUVの登場により人気にかげりが見え始めた

 この人気に陰りが見え始めたのは、1999年に登場した3代目だ。初代パジェロの登場から17年を経過して、悪路向けSUVの目新しさが薄れ始めた。

 パジェロに限らず悪路向けのSUVは、耐久性を重視したメカニズムによってボディが重い。舗装路での走行安定性や街中での運転しやすさが悪影響を受ける。しかも悪路を実際に走る機会は少ない。

 優れた悪路走破力が、SUVユーザーのプライドを満足させる面はあるが、2代目パジェロのユーザーが3代目を購入しない傾向も見られ始めた。

 この流れを加速させたのがシティ派SUVの登場だ。コンパクトな車種として、1994年には初代RAV4、1995年には初代CR-Vが発売されて人気を高め、1997年には初代ハリアーが新時代の上級SUVとして注目された。

 1995年にはレガシィグランドワゴン(後のレガシィアウトバック)も発売され、ワゴンベースのSUVという新たな価値を提案した。

 また1996年には初代ステップワゴン、1997年にはパジェロと価格帯が重複する初代エルグランドも加わり、ミニバンもユーザーを増やしていく。

 このように1990年代の後半は、SUVが多様化して新攻勢力のミニバンも加わり、悪路向けのSUVは、悪路を走る機会が少ないことも災いして急速にユーザーを奪われた。

 しかも3代目パジェロは、売れ筋グレードの全幅を1875mmまで拡大している。2代目までは5ナンバーサイズが基本だったから、3ナンバー車になってもスリムで運転しやすかったが、3代目は大きく変わった。

 フェンダーが盛り上がって外観は力強くなったが、運転感覚も大味になり、初代や2代目のスマートさは薄れた。

 このフルモデルチェンジは、コンパクトだった初代RAV4や初代CR-Vとは対称的で、パジェロはますます旧態依然とした印象を与えた。

 今になって振り返ると、RAV4やCR-Vも2代目以降は北米指向を強めて拡大路線を歩み、パジェロと同じく売れ行きを下げたが、当時はコンパクトでパジェロを不利な立場に追い込んだ。

次ページは : ■不祥事も大きな要因に……アウトランダーPHEVに続けてパジェロの復権に期待!!

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