■アストンマーチン・ラピード
かつては日本のお家芸だった4ドアハードトップ的なコンセプトのクルマは、2000年代になってメルセデスベンツCLSやポルシェパナメーラの登場でリバイバルするわけですが、そのコンセプトをとりわけ先鋭化させた形で作られたのがラピードでしょう。
純然たる2ドアスポーツクーペとして設計されたDB9系の車台をストレッチして4ドア・4座化した、かぎりなくクーペの側に近いスポーツセダン。全長5m超えながらそのパッケージは成人男子4人が座るにもタイトなわけですが、そのぶん、エンジンは6LV12自然吸気のAM12系を搭載、ミッションは後軸直下のトランスアクスルレイアウトとメカニカルな面での妥協はまったくありません。
恐らくここまで極端にスポーツカーの側からアプローチしたスポーツセダンというのは今後二度と現れることはないと思います。もちろん程度やグレードにもよりますが、中古車の流通価格は700万円〜というところ。
もちろん維持は相応に大変だと思います。が、内燃機の頂点である12気筒の体験も込みで考えれば値頃感はなかなかだと思います。
■キャデラックCTS-V
ドイツ勢でいえばEクラスや5シリーズ相当の車格にあたるCTS。ちなみに現在その役割は、日本でも販売されているCT5が担っています。
スポーツカー出自の高性能エンジンを押し込んで……というのは、時代は変われどスポーツセダン作りの常套です。古くはプリンスR380由来のスカイラインGT-R(ハコスカ)とか、フェラーリ328由来のランチアテーマ8.32とか、例を挙げればきりがありません。それはCTS-Vも然り。搭載されるのは代々のコルベットが搭載していた6.2LV8スーパーチャージャーユニットです。
注目すべきは649psに達するバカバカしいまでの火力のみならず。OHVならではのドロッとした低中速域での鼓動感、そこからスーパーチャージャーならではの作動音を伴って、ドバドバと湧き上がるパワーとともに芯を揃えるように高回転域へと突き進むその回転フィール、そういったアメリカンスポーツならではのエンジンの味わいにあります。
現在の流通価格は直近まで販売されていた3代目で800万円前後、556psの2代目で400万円前後と、パフォーマンス比でみればこちらもまずまず値頃ではないでしょうか。
■ホンダシビックタイプR(FD2型)
6代続くシビックタイプRの歴史において唯一の4ドアセダンがFD2型。その生活臭とは裏腹に、筑波スペシャルとも称されたパツパツに固められたアシは同乗者にとっては厳しい修行だったことを思い出します。
搭載するエンジンは2L4気筒のK20A型。225psを8000rpmで絞り出し、レッドゾーンは8400rpm……と、もうこんな超高回転型自然吸気ユニット自体がスーパーカーカテゴリーでさえ絶滅危惧種です。
この珠玉の内燃機をホンダらしく節度感の高いMTで操りつつ、バイクの如き吹け上がりのレスポンスとそのメカニカルサウンドを、日々セダンのユーティリティとともに味わうことができる。この1点だけでみてもFD2は比類のないクルマだと断言できます。
昨今の国産旧車人気に引っ張られて相場は高め、走行3万km台のピンものは400万円級の話になっていますが、この先、味わえないものの対価と考えれば納得できる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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