■続く「こってり」の台頭……「すっきり」の逆襲はあるのか?
●2021年のミニバン販売実績
1位 アルファード 95,049台
2位 ヴォクシー 70,085台
3位 フリード 69,577台
4位 セレナ 58,954台
5位 シエンタ 57,802台
6位 ノア 44,211台
7位 ステップワゴン 39,247台
8位 デリカD;5 14,790台
9位 ヴェルファイア 6,754台
10位 エルグランド 3,613台
1位と2位を代表的な「こってり」が占めているが、3位のフリード、4位のセレナ、5位のシエンタは、どちらかというと「すっきり」なシンプル系。ノアとステップワゴンは、グリルのメッキ部が多く、ややこってりな中間系、そしてデリカD:5はこってり。
つまり、昨年の勢力圏はこうなる。
こってり顔/4割
中間系/2割
すっきり顔/4割
こうして見ると、ミニバン全体では、こってり顔は4割に過ぎない。「セレナハイウェイスターはこってりだろ!」という意見もあるでしょうが、それを加味しても半分程度だ。
ただ傾向としては、大型ミニバンほどこってり顔の割合が高く、サイズが小さいとすっきり顔が主流になっている。最も大型のアルファードクラスは、そもそもこってり顔しか存在しない。大型ミニバンユーザーほど、いかつい顔を求めていることがわかる。
軽ハイトワゴンでカスタム系が増加したのは、「カワイイ系だとナメられて怖い思いをする」という、女性ユーザーの意向が大きかったと言われるが、そのいっぽうで、登録車のミニバンでは、サイズが小さいほどすっきり顔になり、大きいほどこってり顔になっている。
これはつまり、軽ユーザーは防衛策としてのこってり志向で、大型ミニバンユーザーは攻撃策としてのこってり志向である可能性がある。大型ミニバンユーザーほど、「オラオラ顔で周囲を威嚇したい」という密かな思いがあるのではないか。
考えてみれば、周囲に怖がられるのは快感だ。私はやさ男だが、昔、撮影のために怖そうな服装をして街を歩いたところ、周囲の人が避けてくれるのを感じて、非常に気持ちがよかった。新型ヴォクシーの怪獣のような顔を見て、「これに乗って周囲に怪獣扱いされてみたい!」と思うのは、人間の本能の一部だろう。
その一方で、新型ステップワゴンのような、シンプルで美しい道具に囲まれた生活をしたいというのも、人間の本能の一部。IKEAや無印良品の家具のヒットを見れば、怪獣だけが勝ちつづけることはありえない。
で、こってり顔対すっきり顔の対決は、今後どうなっていくのか?
単なる推測だが、当面はこってり顔が勢力を増すのではないだろうか。
新型ヴォクシーの顔は、こってりどころかホラーに近い。こってりのデザイン的な伸びしろは、まだまだある。あんな化け物のような顔のクルマが、受注開始から2か月で約35,000台もの受注を集めたのだ。世の中、「もっともっとこってりを!」と望んでいるのではないか?
その頂点には、ミニバン販売台数でも頂点に立ったアルファードという「こってり顔のカリスマ」がいる。カリスマの存在は大きい。
新型ステップワゴン・エアーのデザインは、私に言わせれば「美少女天使」だが、そこまで支持する声はまだ多くないし、そもそもエアーの受注比率が2割程度しかなく、カリスマにはなれそうにない。
しかし、前述のように、家具の世界ではシンプル系が大勢力となっている。家電も同様。すっきり顔のシンプル系ミニバンが、いつ盛り返しても不思議はない。個人的には、その日が早く来ることに期待している。
【画像ギャラリー】「こってり」派の台頭が続く? 「すっきり」派の逆襲が始まる? ノア/ヴォク&ステップワゴン顔くらべ!!(10枚)画像ギャラリー
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