純EVに必要なのは「心の余裕」ってマジか…急速充電器がスペック通りに充電できない必然的な事情

バッテリー保護や充電効率の観点から80%が望ましい

 急速充電の制御は、メーカーやBEVの仕様などによって異なりますが、バッテリーの充電率がおおよそ70%~80%を超えた時点で、充電電流を急減させるのが一般的です。充電電流が低下すると、普通充電と同じようにゆっくりとした充電に切り替わります。

 基本的な充電制御は、以下のような定電流制御と定電圧制御を組み合わせます。
・充電開始時は、主にバッテリー残存容量とバッテリー温度で決まる充電電圧と充電電流でスタートし、一定電流で徐々に充電電圧を上げていきます(定電流制御)
・バッテリー容量が70%~80%あたりまで上昇したら、バッテリー保護のため充電電圧を一定して充電電流を急減させます(電圧一定)

 この定電流・定電圧制御によって、急速充電では充電率が70%~80%を超えると、充電が進まなくなるのです。この特性を考慮して、メーカーが提示する急速充電時間は、通常80%充電までの時間であり、バッテリー保護と充電効率のために、フル充電するのでなく80%充電を推奨しています。

 急速充電でも、BMSでバッテリーの上限充電率のクリップが設定されていない場合は、80%を超えても引き続き時間をかけて充電を続ければ、100%近くまで充電することは可能です。

リチウムイオンバッテリーの充電制御の一例。充電スタート時は定電流制御、充電率が70%~80%あたりでバッテリー保護のために定電圧制御に切り替えて、充電電流を急減させる。(イラスト:著者作成)
リチウムイオンバッテリーの充電制御の一例。充電スタート時は定電流制御、充電率が70%~80%あたりでバッテリー保護のために定電圧制御に切り替えて、充電電流を急減させる。(イラスト:著者作成)

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 以上のようにバッテリー保護の観点から、バッテリーの充電容量が70%~80%以上になると、充電スペックとの乖離が大きくなり、期待通り充電できなくなります。また高い充電率でなくても、暑い日などバッテリー温度が高くなるような条件では、バッテリー保護のために充電電流を下げるため、充電は抑えられます。

 スペックあるいは公称値とは、ある決められた条件で計測した値であり、通常はその実力を最大限発揮できる環境での値を示します。実際の使用条件ではそれと同等の実力を発揮するのは困難であり、しかたのないことといえます。

 BEVは電池容量を30%~70%で充電を繰り返すことが、バッテリーの劣化抑制や保護につながります。BEVでのカーライフでは、一気に満タンにして先を急ごうとするのではなく、乗員もクルマもこまめに休憩する「心の余裕」が求められるのです。

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