コロナ禍の昨今、もはや入店時や帰宅時にアルコール消毒するのは当たり前となっている。そうなると不思議なもので、菌の繁殖なども気になってくる。そもそも両者は根本から異なるものだが、人を媒介とするウイルスと違って、菌は栄養源さえあればどこでも繁殖してしまう。
しらないうちに車内で増えていて、害をなす可能性もあるのだ。そこで、今回はそんな菌の繁殖を妨げる「抗菌仕様について」ご説明しよう!
文/藤田竜太、写真/TOYOTA、NISSAN、Adobe Stock(トップ画像=DUSITARA STOCKER@Adobe Stock)
■コロナをきっかけに採用が進む抗菌仕様
トヨタが2022年5月に、細菌の繁殖を抑制する効果がある抗菌シートと抗菌シートベルト(後席)を採用したJPN TAXIの一部改良版の発売を発表して話題になるなど、抗菌に関する関心度は高い。
しかし、こうしたクルマの抗菌仕様、効果はどれだけ持続するのか? そしてメンテナンスはどうしたらいいのか???
その前に「抗菌」について少しおさらい。抗菌は、滅菌や殺菌、除菌とは違い、あくまで「菌を長時間増やさない」という意味。
JIS(日本工業規格)では、加工されていない製品の表面と比較し、細菌の増殖割合が100分の1以下(抗菌活性値2以上)である場合、その製品に抗菌効果があると規定していて、この条件をクリアしたものを抗菌加工製品と認めている。
実際にクルマに採用されている車内の抗菌グッズには下記の3タイプがある。
・抗菌作用のある抗菌剤を素材に練り込んだりコーティングさせたもの
・細菌が嫌うという銅や銀、亜鉛、銀、酸化チタン、マグネシウムなどを使った無機系抗菌剤
・光触媒の作用で、黄色ブドウ球菌、大腸菌などの菌の繁殖を防ぐもの
上掲のトヨタJPN TAXIの抗菌仕様は、シートベルトが光触媒による抗菌コーティング。タング(樹脂部)、バックル部のボタン/カバー、コネクタタング(樹脂部)/バックル部のカバーには銀系抗菌剤添加を施している。
これらの効果がいつまで持続するかだが、光触媒コーティングは、一般的に3〜4年の持続効果があるといわれている。一方、銀、酸化チタンなどを使った無機系抗菌剤は、半永久的に効果が保たれ、とくにケアやメンテナンスは不要。
トヨタだけでなく、日産自動車も2021年4月8日に「今後新たに国内で発売する車両に、順次、抗菌仕様のステアリングとシートを採用する」と発表したのは記憶に新しいところ。
このとき、抗菌効果の持続性について、日産自動車に取材すると、下記の回答が得られた。
「日産では開発段階で、5年分の劣化負荷をかけて実験を行ない、新車装着時から5年後でもこれらのステアリングやシートの抗菌作用が失われていないことが確認できている」
また、その間は、新たな抗菌加工などのメンテナンスも必要ないと教えてくれた。
というわけで、少なくとも自動車メーカーが新車時に施してくる抗菌仕様については、ノーメンテで5年以上は効果があると思って間違いない。
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