■クルマ酔いしにくいクルマの特徴
以上を踏まえると、クルマ酔いを発生させにくいクルマの条件も分かる。まず車両の性能としては、重心をなるべく低く抑え、足まわりは過度に柔らかくせず、前後左右に振られにくい挙動にすることが大切だ。車両が同じ角度に傾く場合でも、挙動の変化を穏やかに進めて、唐突な動きを抑えたい。
これはそのまま走行安定性の優れたクルマの条件にも当てはまる。挙動が唐突に変化せずボディの傾き方も適度なら、カーブを曲がったりする時や危険を避ける時の安定性も優れている。従って走行安定性の優れたクルマは、クルマ酔いも発生させにくい。
内耳で感じ取る情報と、目や体で感じる情報の不一致を生じにくくするには、視界も重要だ。
前述の通り、助手席は後席に比べてクルマ酔いを発生させにくい。前方がしっかりと見えるクルマ造りが求められる。そうなるとクルマ酔いをしにくい理想のクルマは、ボディの傾き方が適度で唐突な挙動変化も発生せず、なおかつ後席からも前方が良く見えるクルマになる。
難しいのは、車両の挙動変化と視界のバランスだ。挙動が唐突に変化せず、ボディの傾き方も適度なクルマは、セダンのように重心の低い車種になる。
ただしこのようなカテゴリーは、着座位置も低めだから、後席に座るとクルマに潜り込んだ感覚になりやすい。前後席のシート間隔も近いから、後席に座ると目の前に前席のヘッドレストがあり、圧迫感が生じて前方の様子も分かりにくい。
このあたりのバランスを考えて、家族で使いやすいクルマを考えると、カテゴリーではミニバンがベストだ。高重心だから左右に振られやすいが、開放感があり、機能的にも車内が広いから使いやすい。
その上で、ボディの傾き方が適度で唐突な挙動変化も発生させず、なおかつ後席からも前方が良く見えるミニバンを考えたい。なおオデッセイは生産を既に終えているので、候補からはずしている。
■クルマ酔いを発生させにくいミニバンランキング
●No.1:ホンダ ステップワゴン
プラットフォームは先代型と共通だが、挙動の変化は穏やかだ。後輪の接地性が特に高く、高速道路で横風にあおられた時も、左右に振られにくく乗員も安心できる。峠道を走る時でも、挙動は安定している。これらはクルマ酔いの発生を抑える効果がある。
そして2/3列目のシートに座って前方を眺めると、サイドウインドーの下端が前方へ一直線に伸びている。車内の見栄えがスッキリとシンプルで、後席に座る乗員の視線が自然に前方へ向かう。そうなると遠方の風景を見るから、車両が上下左右に振られても、視線はブレにくい。
前方が見やすいように、背もたれの形状も、少し細身にするなど工夫を施した。カーブが近付くと、後席の乗員もこれから生じる挙動変化を予想しやすく、クルマ酔いも生じにくい。
3列目のシートは、座面を21mm厚くして、背もたれも改善することにより座り心地を向上させた。快適性を高めると同時に、着座姿勢も安定させている。着座姿勢が不用意に乱れにくく、これもクルマ酔いを防ぐ効果がある。
ちなみにステップワゴンの開発では、クルマ酔いの研究も重点的に行い、デザインや足まわりの設定に反映させたという。
●No.2:トヨタ ノア&ヴォクシー
現行型になってプラットフォームなどが刷新され、走行安定性も向上した。これに伴ってボディが左右に振られにくくなり、乗員にも不規則な力が加わりにくい。走行安定性の向上により、クルマ酔いを防ぐ効果も得られた。
またステップワゴンと同様、シートは背もたれの形状を見直して、2/3列目に座った乗員の開放感や前方の見やすさにも配慮している。
ミニバンは家族で使う機会の多いカテゴリーで、幼い子供も同乗するから、クルマ酔いに配慮した開発を行う。設計の新しい車種ほど、その傾向も強まり、ステップワゴンと併せてノア&ヴォクシーもクルマ酔いを生じにくいミニバンとなった。
●No.3:トヨタ アルファード
アルファードは、クルマ酔いのしにくさを考えると、乗り心地が柔らかい。それでも3位に挙げた理由は、車内が広くて開放感も伴うからだ。3列目に座っても、2列目との間隔が十分にあるから、圧迫感が生じにくい。ウインドーの面積も広く開放感がある。
室内幅が広いから、車内の中央に広い空間があり、3列目に座っても前方を見やすい。これらはクルマ酔いを抑える効果を発揮する。
このほかデリカD:5も、唐突なボディの傾き方を少なく抑えた。セレナ、シエンタ、フリードは、いずれもフルモデルチェンジを控えており、現時点では推奨しにくい。クルマ酔い以前の課題として、ミニバンを選びにくい状況になっている。
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