先日登場した、トヨタ新型「クラウン」。4つのバリエーションのうち、最初に登場するのは「クロスオーバー」で、今秋発売予定とされている。
近未来的なエクステリアデザインと、大径タイヤを装着した姿は、セダンとSUVを融合した高級クロスオーバーだというが、高級セダンとSUVとの融合といえば、日産「スカイラインクロスオーバー(J50型、2009年~2016年)」が、思い出される。
だが、デビュー当初は大いに期待されつつも、日本市場では受け入れられず、1世代で終えてしまったモデルだ。いま登場させれば、成功できるのだろうか。
文:吉川賢一
写真:NISSAN、TOYOTA
「インフィニティEX」の日本向けモデル
J50型スカイラインクロスオーバーはもともと、日産の北米向け高級車チャンネル「インフィニティ」のクロスオーバーSUV「EX35」として、2007年に誕生したモデルだ。プラットフォームやサスペンションといったコンポーネンツの多くは、G35(日本名:V36型スカイライン)と極力共用していたが、内外装パーツはほぼ専用設計。3.7LのV6エンジンと当時としては多段の7速AT、駆動方式はFRもしくは4WDを組み合わせ、「G35のハンドリングと乗り心地の良さを持つ小型プレミアムクロスオーバーSUV」と位置づけられていた。
EXのターゲットユーザーは、北米の小金持ちの奥様(旦那様はM45などの大型セダンを想定)。そのため、プレミアムを強調した路線となっており、素材にこだわったインテリアの質感が非常によかった。また、見た目だけでなく、走りも一級品。日本へ「スカイラインクロスオーバー」として導入された当時も、スカイライン譲りの走行性能は、評論家や自動車メディアの間で、非常に評価が高かった。
ベース車との価格差が大きすぎたことが敗因
しかしながら、SUVという割には後席や荷室が狭いこと(日本市場は、乗る機会が少ないのに、後席の居住性を求める傾向がある)、燃費の悪い3.5Lエンジン仕様しか導入がなかったこと、2WDが420万~472.5万円、4WDが447.3万~499.8万円と非常に高額であったことなどがネックとなり、販売はほとんど盛り上がらず、2016年、国内販売は終了に。もし、中国で出していた2.5LのVQ25HR型エンジン仕様(しかもホイールベースを80mm伸ばしたロングホイールベース仕様。ただし中国国内向けの専売)でもあれば、違った結果となっていたかもしれないが、日本向けの追加・改良のためのプロジェクトが発足することはなかった。
スカイラインクロスオーバーは、高額であったことに加えて、スカイラインクラスを購入検討する顧客のターゲット層が、ちょっと頑張れば手が届く価格差におさまっていなかったことも、人気が振るわなかった要因であろう。スカイラインクロスオーバーのような「派生型SUV」は、購入する顧客のターゲット層が変わらない価格差に抑えなければ、ヒットさせることは難しい。たとえいま登場させるにしても、ここが変わらないかぎり、スカイラインクロスオーバーのヒットは難しい。
コメント
コメントの使い方スカイライン/インフィニティQセダンのI-Power(e-Power) 4WD計画があったのは、Qsインスピレーションコンセプトが出た2019年の話。
でも結局目標性能を達成できず白紙化されたのは、インフィニティ現社長の発言含め広く報じられていたと思いますよ。
3.5ではなく330psの3.7Lエンジンしか無かったのですよ。税区分も4Lクラスです。
ハッチバック化してもFRを保ちAWDはアテーサ、Zと同じエンジンに専用開発サス、内外装の全てに
プラットフォームまで詰めた専用品と、V36スカイラインのフラッグシップな位置づけでした。
アラウンドビューなど快適装備も最先端で今でも通用するレベル。これほど贅沢な車にする必要を、客側は感じなかったのでしょうね。