目隠し信号機はなんで斜めからは見えないの!? その仕組みと理由に驚愕!

 都市部を中心に青信号だけ目隠しをしている信号機が増えてきた。真正面など該当する方向からはしっかり確認できるが、角度を変えるとまったく見えないというモノ。何度となく、何とかして見えないか!? と挑戦したことのある人も多いハズだが、あれはどんな仕組みなのか!?

文/斎藤優太、写真/斎藤優太、AdobeStock(トップ写真=Soraplus@AdobeStock)

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目隠し信号(視覚制限灯器)の目的は誤認防止のために設置されている

視覚制限灯器は鋭角な交差点、交差点までの距離が近い場所、本線と側道がある場所に設置されていることが多い。写真の交差点の信号機は円筒状のフードで覆われている(Katsuhiko@AdobeStock)
視覚制限灯器は鋭角な交差点、交差点までの距離が近い場所、本線と側道がある場所に設置されていることが多い。写真の交差点の信号機は円筒状のフードで覆われている(Katsuhiko@AdobeStock)

 そもそも目隠し信号は、誤認を防止するために意図的に見える範囲を制限している信号機だ。信号機メーカーでは、視覚制限灯器という名称になっている。信号の灯火を視認できる範囲は、左右と上下で制限できる。そのため、何とかして見ようとしても見えないのだ。

 では、視覚制限灯器はどのような場所に設置されているのだろうか。具体的には、鋭角な交差点、交差点までの距離が近い場所、本線と側道がある場所に設置されていることが多い。これらの場所に視覚制限灯器が設置されていると、どの信号に従えばいいのかわかりやすくなるためだ。

 視覚制限灯器が設置されている目的はわかったものの、信号が認識しづらいと感じたことがある人もいるだろう。

 事実、大阪府警の意見の中に「信号機に接近しないと信号灯器の色がわからない」というものがあった。寄せられた意見どおり、信号機に近づかないと色がわからない視覚制限灯器がある場所では、先の信号の色がわからないためにスムーズな運転ができないと考えることもできる。

 この意見に対し大阪府警は「交差点間の距離が近い場合や本線と側道がある場合には、誤認を防止する目的で意図的に視角を制限している信号灯器があります」と回答している。

 市街地や住宅街など、交差点の間隔が近い場所や連続する場所では、信号の誤認が重大事故につながる可能性が高い。視覚制限灯器は、他の車両や歩行者などの安全を守るという意味もあると言える。

 つまり、視覚制限灯器は、誤認を防止するだけでなく、交通の安全を確保するという重要な役割も担っている信号機といえるだろう。

目隠し信号(視覚制限灯器)の仕組みとは?

視角を制限するためにフードで覆った信号機の例。外付けフード式の場合、どちらの角度から見せたくないのかが分かるので注意喚起にもなる(Soraplus@AdobeStock)
視角を制限するためにフードで覆った信号機の例。外付けフード式の場合、どちらの角度から見せたくないのかが分かるので注意喚起にもなる(Soraplus@AdobeStock)

 誤認を防止する視覚制限灯器は、灯火部分にフードを付ける「外付けフード式」が一般的だろう。外付けフード式の視覚制限灯器とは、信号機の灯火部分に円筒状もしくは角筒状の部品が取り付けられているタイプだ。

 円筒状または角筒状のフードを取り付けると、左右から見えなくなるが、信号機に対面している道路上の運転者からは見えてしまう。これでは、交差する道路からの誤認は防止できても、進行方向の道路を走行している車両の誤認防止ができない。

 しかし、視覚制限灯器には、見える範囲が上下左右で制限されているタイプがある。見える範囲を上下左右で制限している視覚制限灯器は、どのような構造になっているのだろうか。

 上下左右からの誤認を防止する外付けフード式の視覚制限灯器は、円筒状または角筒状のフードの中に、複数枚の細長い羽板(ルーバー)を並べて見える範囲を制限している。

 視覚の制限をする方向はルーバーの並べ方で変えることが可能だ。ルーバーを横向きに並べれば上下の視覚が制限され、縦向きに並べれば左右の視覚が制限される。実際に視覚制限灯器をよく見てみると、フードの中にルーバーが何枚も並んでいることがわかるだろう。

 では、視覚制限灯器の視認範囲は、どのくらいに調整されているのだろうか。

 信号機を製造している信号電材の外付けフード視覚制限灯器の場合、左右の制限が12°/18°/24°の範囲で調整でき、上下の制限が12°/18°の範囲で調整できるとのことだった。信号電材の外付けフード視覚制限灯器の図面を見ると、予想以上に視認範囲が狭いことがわかる。

外付けフードがない視覚制限灯器もある!

近年普及しているLEDの信号機には、「インナーフード」タイプの視覚制限灯器もある。視認有効範囲を外れると、写真のように停電中の信号機のように見える(筆者提供)
近年普及しているLEDの信号機には、「インナーフード」タイプの視覚制限灯器もある。視認有効範囲を外れると、写真のように停電中の信号機のように見える(筆者提供)

 視覚制限灯器は、外付けフード式だけではない。

 近年普及しているLEDの信号機には、「インナーフード」タイプの視覚制限灯器もある。インナーフードタイプの視覚制限灯器は、外付けフードなしで視認範囲を制限できる灯器だ。

 日本電材のインナーフード視覚制限灯器の場合、視認有効範囲が30°、夜間光漏れ範囲が左右20°ずつとなっている。

 外付けフードタイプの視覚制限灯器よりも視認範囲は広いものの、見える範囲が絞られているため、鋭角な交差点でも誤認することはないだろう。また、インナーフードタイプの視覚制限灯器は、矢印信号に使われていることもある。

 さらに、インナーフードタイプの視覚制限灯器は、運転者の誤認を減らせるだけでなく、近隣住民への光漏れを最小限に留められる信号機となっている。インナーフードタイプの視覚制限灯器が広く普及すれば、深夜の信号機の眩しさに悩まされることも減るだろう。

歩行者用の信号機も目隠しになる?!

 信号電材の資料によると、歩行者用視覚制限灯器の開発もしているとのこと。車両の運転者の中には、歩行者用の信号機の点滅や赤に変わったタイミングをヒントに走行する人もいるだろう。しかし、近い将来、歩行者用信号のタイミングを掴むことができなくなる日が来るかもしれない。

 信号電材が開発中の歩行者用視覚制限灯器の資料によると、歩行者用視覚制限灯器の視認範囲は、信号待ちしている車両から見えない範囲となっている。

 歩行者用視覚制限灯器が実際に使われるようになった場合、車両の運転者は歩行者用信号の変わり目がわからなくなる。

 違反しない範囲内で歩行者用の信号を利用している運転者にとっては困ることかもしれない。ただ、車間距離を詰めて交差点に進入したり、黄色信号で交差点を通過したりする違反運転者は減るだろう。

 より安全な交通社会を目指すのであれば、歩行者用視覚制限灯器が必要と言えるだろう。

交通社会に欠かせない信号機は絶えず進化していた!

 交通社会に欠かすことができない信号機は、LEDタイプが普及したり、インナーフードタイプの視覚制限灯器が開発されたりするなど進化している。また、LEDタイプの信号機も球面レンズからフラットレンズに変わったり、太陽や空が写り込まない視認性の高いレンズに変わったりするなど改良されている。

 LEDタイプの信号機の普及により信号機の電球を交換する光景を見なくなったように、信号機の視覚制限フードを見なくなる日も近いかもしれない。

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