未曾有の大異変のなか各メーカーが抱える問題点とは? 国産メーカーのクルマ販売最前線

■三菱編(2021年の国内総販売台数:7万7674台/国内の販売拠点数:550店)

●テーマ
・eKクロスEVの販売への意気込みは?
・現在の主力販売車種は?

世界初の量産EVとして2010年に一般販売を開始した三菱 i-MiEV(写真)だったが、販売面で苦戦。そのリベンジの時だ!
世界初の量産EVとして2010年に一般販売を開始した三菱 i-MiEV(写真)だったが、販売面で苦戦。そのリベンジの時だ!

 i-MiEVは2010年に個人向けの販売を開始。2010年度の販売予定は4000台だったが、価格は398万円と高く、経済産業省の補助金を差し引いても実質284万円。

 当時のリーフ(日産)の実質価格が299万円だから、軽自動車のi-MiEVは割高で、売れずに終わった。

 その意味でeKクロスEVへの期待は大きい。Gの価格は239万8000円で、経済産業省の補助金を差し引くと184万8000円。i-MiEVに比べて実質的に約100万円安い。eKクロススペースTと同程度だ。

 一充電の航続距離は180km(WLTC)。

 セカンドカーとしてなら不都合はなく、軽自動車ゆえ街中の移動には最適。EVと軽自動車の親和性に着目した点はi-MiEVと共通で、三菱にとってまさにリベンジだ。

 eKクロスEVの月販目標は850台だ。最近の三菱の軽自動車は、原材料の不足もあって、納期と届け出台数が不安定だ。

 そこを踏まえて2022年の1カ月平均届け出台数を見ると、eKスペース&eKクロススペースは約1050台、eKワゴン&eKクロスは約1500台になる。eKクロスEVの850台という販売目標は、三菱の店舗数が全国に550箇所と考えると好調だ。

 今後の日本のEVは、日産サクラも含め、セカンドカーとして短距離の移動に使われる軽自動車を中心に普及。そしてeKクロスEVの外観は、eKクロスとほぼ同じだから、三菱のSUVを軸にしたブランドの浸透にも貢献する。重要な基幹車種だ。

(TEXT/渡辺陽一郎)

■スバル編(2021年の国内総販売台数:10万1312台/国内の販売拠点数:460店)

●テーマ
・BEVのソルテラを本当に売っていけるのか?
現在の主力販売車種は?

スバル ソルテラ。販売目標は別としてスバル初のEVをしっかりと販売し、サポートできるのかには不安が残る
スバル ソルテラ。販売目標は別としてスバル初のEVをしっかりと販売し、サポートできるのかには不安が残る

 ソルテラの価格は540万〜620万円で、経済産業省の補助金を差し引くと455万〜535万円だ。

 既存のスバル車のラインナップで最も高いWRX S4 スポーツR EXは477万4000円になる。スバルのブランドイメージを考えると、ソルテラは相当な高価格車だ。

 そしてソルテラの1カ月の販売目標は150台だ。少なく思えるが、WRX S4インプレッサG4(スポーツを除く)は、2022年の1カ月平均登録台数が130台程度に留まる。スバルの国内店舗数は約460箇所で、トヨタの約10%だから、1カ月に150台の販売目標は極端に少ない数字ではない。

 スバル初のEVであるソルテラを堅調に売るには、販売店に試乗車を充分に配置して、気軽に試乗できる体制を整えることが不可欠だ。

 スバルはレヴォーグWRXにより、ターボのイメージが強く、逆に電動車のイメージは弱い。

 ただしクルマ好きの多いブランドだから、「運転して楽しい」と認められれば、エコではなく走りとメカニズムの魅力で売れゆきを伸ばす余地も生じる。

 今はスバルの主力はフォレスターだ。2022年には1カ月平均で約2100台を登録した。ソルテラも外観はSUVだから、XブレークやSTIも用意したいところ。

 共同開発したトヨタのbZ4Xと異なり、「EVである以前にスバル車」という特徴を表現しユーザーにアピールすることが大切だ。

(TEXT/渡辺陽一郎)

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