フィットはなぜ売れ行きが伸び悩んでいるのか? マイナーチェンジ&RS投入でテコ入れなるか!?

■フィット伸び悩みの理由とは

伸び悩みの理由のひとつが、さっぱりし過ぎて少し頼りない内外装にある。乗ればわかる魅力があるだけに、外見の印象で敬遠されているのは残念
伸び悩みの理由のひとつが、さっぱりし過ぎて少し頼りない内外装にある。乗ればわかる魅力があるだけに、外見の印象で敬遠されているのは残念

 なぜフィットは、ここまで売れないのか。この背景には複数の理由がある。

 まずは外観だ。フィットは現行型になって、視界を前後左右ともに向上させた。ボディの先端にあるAピラー(柱)は、実際にはフロントウインドウの窓枠で、細くデザインされている。ボディ剛性は、その後ろ側のドアミラーに隣接したピラーで保つが、外観の見栄えは少し頼りない。フロントマスクも賛否両論だ。

 内装も同様だ。現行型はインパネの上面を平らに仕上げ、細い窓枠と相まって、前方視界が優れている。その代わり質感やボリューム感の演出が難しい。2本スポークのステアリングホイールも、メーターなどの視認性は向上するが、見栄えは物足りない印象を受ける。

 ハイブリッドのe:HEVは、エンジンが発電を行い、駆動はモーターが受け持つ。そのためにアクセル操作に対する反応が機敏で加速は滑らかだが、WLTCモード燃費は、売れ筋グレードで見ると27.4~28.6km/Lだ。ライバル車になるヤリスハイブリッドの35.4~36km/Lに比べて見劣りする。

 グレード構成も分かりにくい。現行型はグレードとメーカーオプションの組み合わせ総数を減らすことも視野に入れ、グレードを5種類と豊富に用意する代わりに、メーカーオプションを削減した。

 そこで設定されたネスと呼ばれるグレードが曖昧だ。SUV風のクロスターをベースに、外装パーツをホームに近付けた内容になる。メーカーは「スポーティ指向のグレード」と説明したが、以前のRSに比べて魅力が分かりにくい。

 それでも現行フィットは「乗ると良いクルマ」だ。e:HEVは加速が滑らかで静粛性も優れ、コンパクトカーでは乗り心地も快適だ。視界も良いから運転しやすい。

 さらに全長が4m以下で、全高を立体駐車場が使いやすい高さに抑えたコンパクトカーでは、車内が最も広い。後席の居住性はミドルセダン並みで、燃料タンクを前席の下に搭載するから、後席を床面へ落とし込むように畳むと大容量の荷室に変更できる。

 これらのメリットが、市場には十分に伝わらず、売れ行きを低迷させた。

■ライバルは身内にいた!?

現行型ホンダ N-BOX。2018年、2019年の1カ月平均で約2万台以上、2020年、2021年はコロナ禍の影響を受けながらも約1万5000台以上を売り上げた
現行型ホンダ N-BOX。2018年、2019年の1カ月平均で約2万台以上、2020年、2021年はコロナ禍の影響を受けながらも約1万5000台以上を売り上げた

 現行フィットの売れ行きが下がった理由として、N-BOXの存在もある。先代(初代)N-BOXは1ヵ月平均の届け出台数が1万5000台前後だったが、2017年に2代目の現行型にフルモデルチェンジされると、販売台数を急増させた。

 2018年には1カ月平均で約2万台、2019年は約2万1000台に増えて、2020年はコロナ禍の影響を受けながらも約1万6300台だ。2021年も約1万5700台であった。

 現行N-BOXが売れ行きを急増させたのは、先代型も好調に売られたために膨大な乗り替え需要があり、なおかつ好調な販売予測を前提に、現行型が高いコストを費やして商品力を一層高めたからだ。

 具体的には、先代型の特徴とされた車内の広さや荷室の使い勝手を保ちながら、内装の質、シートの座り心地、乗り心地、静粛性を大幅に向上させた。

 その結果、フィットから現行N-BOXに乗り替えるユーザーが増えた。ホンダの販売店では以下のように説明する。「N-BOXは軽自動車だが、車内はフィットよりも広く、後席の足元空間もタップリしている。後席を畳めば自転車などを積みやすい。

 内装の質や安全装備もフィットに負けない。価格はフィットにノーマルエンジンを搭載するホームと、N-BOXにエアロパーツを装着したカスタムが同程度だから、多くのお客様がN-BOXを買い得と感じる」。

 つまりフィットの強敵は、身内のN-BOXともいえるわけだ。そのために以前のN-BOXは、決算期などの低金利キャンペーンやディーラーオプションのサービスをほとんど実施しなかった。

 販売店からは「N-BOXは積極的に売らないように指示されている」という声も聞かれ、メーカーの開発者は「N-BOXはモンスターのようなクルマで、ほかのホンダ車の需要を奪う」と述べた。そこまでN-BOXの販売は絶好調なのだ。

 このような具合だから、フィットはN-BOXとの販売合戦に敗れ、フリードのほうが好調に売られている。フリードはコンパクトミニバンだから、3列のシートが装着されて多人数乗車も可能になり、3列目を畳むと4名で乗りながら自転車も積める。N-BOXとは競争しにくい。

次ページは : ■フィットのマイナーチェンジは2022年10月!!

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