エネルギー効率に優れ、普及が進むハイブリッド車。脱温暖化という視点からも喜ばしい流れではあるのだが、一つだけ問題がある。バッテリーが上がってしまったエンジン車の救援ができないのだ。
容量の大きなバッテリーも積んでいるのになんでダメなのか。その理由を探ってみた。
※すべてのハイブリッド車が当てはまるわけではありません。救援が可能かどうかは当該車の取り扱い説明書を確認してください(編集部註)
文/藤田竜太、写真/TOYOTA、日立オートバーツ&サービス、ベストカー編集部、AdobeStock
■「助けましょう」と言われてもハイブリッド車では……
9月になってもまだまだ蒸し暑い日が続いている。クルマに積まれたバッテリーはかなり弱っていると思っていい。
お盆の渋滞ではエアコンの使用率もアップするうえに、高温によってバッテリーの電解液の活性化が高まり、自己放電が進みやすくなる。こうしたことが原因となって、バッテリーが上がりやすくなるのだ。
実際、定期的に発表されるJAFのレポートを見てみても、「バッテリー上がり」は出動理由の常連でもある。
とはいえ普通のエンジン車ならば、それほど深刻な問題ではない。ブースターケーブルさえ持ち歩いていれば、ご近所さんや親切そうな人を捕まえて、ちょっと電気をわけてもらえばあっという間に問題解決だからだ。
ところがそうはいかないクルマがある。どんなに親切な人が乗っていようと、ハイブリッド車に限っては、バッテリー上がりの救援車になれないのだ。
ハイブリッド車は、駆動用の高電圧(200V以上)バッテリーと、補機用の12Vバッテリーが搭載されている。
この12Vの補機用バッテリーなら、故障車のバッテリーとブースターケーブルでつないで救援できるような気がするが、トヨタやホンダのハイブリッド車の取扱説明書には、他車のバッテリー上がりを救援することはできないとはっきり書かれている。
■ポータブルバッテリーを携帯しておけば安心
ハイブリッド車やPHVなどは、災害などで停電になったとき、1500W程度の給電能力があり、AC100V電源が利用できることをウリにしているクルマも多いのに、なぜクルマ同士のバッテリー上がりの救援車になることはできないのか。
トヨタのお客様相談センターに確認してみたところ、
「ハイブリッド車の補機用バッテリーと、ガソリン車のバッテリーをブースターケーブルでつないで救援しようとすると、救援車のエンジンがかかった瞬間、大電流が流れ、ハイブリッド車の電源系統やハイブリッドユニットが故障する可能性があるので、ハイブリッド車でバッテリー上がりのガソリン車を救援することはできません」
と、その理由を答えてくれた。
今日のようにハイブリッド車が普及している現状を考えると、「いざというときはブースターケーブルでジャンピングスタートすれば……」というのは、ちょっと甘い考えになってくるかもしれない。
最近は、クルマのジャンピングスタートにも使える大容量のポータブルバッテリーがわりと安価に出回っているので、こうしたものを常備しておいた方が心強いといえるだろう。
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