■爆売れした3代目は販売店改革を進めた立役者
トヨタ4チャネル併売が実現し、さらにエコカー減税の追い風を受けた3代目プリウス。前期型はもちろん、後期型もエコカー補助金の後押しがあり、大きく販売を伸ばした。
販売店では、黙っていてもプリウスが売れていく状態だ。自ら売りに出なくとも、プリウス目当てにお客さんがお店へ訪れる。3代目プリウスは、現在では当たり前に行われている「来店型販売」を、トヨタが本気で実行するきっかけとなったクルマだと筆者は思う。
お得意様をまわり、御用聞きをしながら販売へつなげる。さらにお得意様からの紹介などをもらって、月々の販売実績を出す営業方法が、2009年頃までは安定した数字を取れる営業スタイルだった。
こうした販売スタイルを180度転換し、ショールームで営業マンが待ち構えるという売り方が当たり前になったのは、3代目プリウスのメガヒットのおかげであろう。
しっかりとアポイントを取り、お客様に来店してもらって1日に複数件の商談を店舗で行う。この方法で営業マンの移動時間や移動コストはゼロになり、営業効率のみならず、販売店の経営効率も大きく上がった。
同時に「聴く」営業が重要視されるようになった時期でもある。営業マンが積極的に話すよりも、ユーザーの相談に乗りながらクルマ選びをサポートする役割が強くなった。ハイブリッドに対して抵抗感があるユーザーの不安を、営業マンが取り除く役割を担っていたのだ。
今なお続く、トヨタ販売王国の変革を下支えしたプリウス。そして営業マンに傾聴する力を授け、トヨタ販売店を新たなステージに押し上げた革命的なクルマなのである。
■新しいデザインをどう売るか! 考えさせられた2・4代目
初代や3代目のような、販売面での派手さは無かったものの、2代目と4代目プリウスでは、売り手が「考える」力を養った。
コンパクトセダンから3ナンバー車へ大きくなった2代目、歌舞伎顔と言われ当時としては奇抜なデザインだった4代目と、この2台は販売現場を少し苦しめた存在でもある。
同時に、プリウスというブランドがついたクルマを、奇抜ながらにどう売っていくのか、試行錯誤したタイミングでもあった。性能を売りにするのか、デザインや機能性を説明するのか、どのような提案がユーザーに響くのかを考え、それを試し続けていったのだ。
こうした経験をしておくと、いかなる新型モデルが来ても、「問題なく売れるだろう」という不思議な自信が湧いてくるものだ。クルマそれぞれの良さを探し、ユーザーのニーズと照らし合わせることで、提案の質が高まる。同時にユーザーの満足度(顧客満足度)も高まったのではなかろうか。
C-HRやアルファードなどが飛ぶように売れていったのも、こうしたプリウスによる経験を、販売現場が糧として生かせた証拠であろう。無難と言われ続けたトヨタでも、個性的なクルマが人気車になる礎を作り上げた。
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ここまで挙げてきたのは、プリウスの功績の中の一部に過ぎない。自動車産業そのものに対して大きな影響を与えたプリウスだが、販売現場に絞って考えても、大きな影響を与えたクルマだ。
筆者は過去にプリウスを販売してきたということを誇りに思う。初代から販売してきたトヨタ店のスタッフからも、同様の声が出てきた。そう思わせてくれるプリウスは、トヨタディーラースタッフにとって、大きな功労者(車)なのであろう。
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