国内の企業のなかで最大の鋼材を買い入れているのがトヨタだ。だが、日本製鉄と自動車用の鋼材を値上げすることで合意し、部品会社に供給する価格を2022年度下期は上期よりも1トン当たり約4万円引き上げ、上昇幅は2010年度以降で最大に。
鋼材は車両1台当たりの素材価格の約半分を占めており、今回、トヨタが日鉄との交渉で車用鋼材の大幅な値上げを受け入れたことで新車価格への転嫁を検討する可能性は大いにありそうだが、これから先も値上げしていくのか、それとも抑えきれるのだろうか。福田俊之氏が分析する。
文/福田俊之、写真/AdobeStock(トップ画像=andrewesterland@AdobeStock)
■値上げラッシュの波に「クルマよ、お前もか!?」
世界的なインフレと円安のダブルパンチによる値上げラッシュが止まらない。
10月に入ってから食料品などは再値上げも含め、6500品目以上が予定されているほか、ガソリンも石油元売りへの巨額の補助金を除けばリッター200円以上で高止まり。電気、ガスなども急騰は避けられず、賃上げの実感が乏しいなか、家計への負担は増すばかりだ。
その値上げラッシュの波は食料品、エネルギーといった日々の必需品にとどまりそうにない。遅れて値上げの波が到来すると予測されているのは耐久消費財。住宅と並ぶその代表格が自動車である。
すでに輸入車は大半のブランドが昨年以来、断続的に値上げを行っている。その傾向が特に顕著なのは、デフレでモノの価格が総体的に安い日本に合わせるため本国よりも安い戦略価格を取っていた欧州の大衆車ブランドだ。
円安ユーロ高による為替差損、原材料高騰、生産工場から日本に輸送する船賃などが上昇し、収益を圧迫すればもともと少なかった利益が吹っ飛んでしまうとあって、VW、プジョー、ルノーなどほぼ全ブランドが値上げに踏み切った。
値上げ幅はモデルによっては数十万円に及び、まるでクラスアップしたかのような印象すらある。
そもそも利益幅に余裕がある高価格帯のクルマは少々の値上げでは客離れを起こさないため、無理に利益を削り飛ばして価格を維持する必要がない。
ポルシェやフェラーリに代表されるエキゾチックカーと呼ばれるジャンルでは100万円を軽く超えるような値上げが相次ぎ、メルセデスベンツやBMWなどの量産高級車もさらなる値上げも予想される。
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