近年、車のモデルサイクルはどんどん長くなってきた。かつては4年に1度フルモデルチェンジが行われるパターンが定番だったものの、今や人気車でも5年以上売り続けられる車種も少なくない。
そうなると重要になってくるのが「マイナーチェンジ」。モデルチェンジとモデルチェンジの間に、各車さまざまな“改良”を行って、商品力の維持や後発の競合車に対応する重要性はさらに増している。
……にも関わらず、フルモデルチェンジした車種は変更点が大々的に紹介される一方、マイナーチェンジは、それほど大きく報じられない。
しかし、実際には重要なマイナーチェンジも多く、そのいっぽうであまり「身」のある変更ではないマイチェンもある。だからこそ本企画では、2018年に行われた意義のあるマイチェン、そうでないマイチェンを取り上げたい。
文:鈴木直也、国沢光宏、渡辺陽一郎
写真:編集部、NISSAN、Honda
ベストカー 2018年12月26日号
ノートとアウトランダーは電動ユニットをきっちり進化!
外装のお化粧直し程度のマイナーチェンジはピンとこないが、しっかり内容を充実させてきた改良モデルはやっぱり「イイね!」と思う。
最近ではノートe-POWERに追加された「NISMO S」が秀逸だ。デビュー5年目のノートを復活させたe-POWERを強化し、“ホットハッチ”といっていいくらいのスパイスを投入。
ノーマルから25%アップの32.6kgmというトルクは、ガソリンエンジンなら3L級。コンパクトなボディをグイグイ引っ張るやんちゃな走りは、電動化のさらなるポテンシャルを感じさせてくれる。
同様に、アウトランダーPHEVもモーター出力アップなど、電動パワートレーンをキッチリ正常進化させている。
エンジン排気量を2.4Lに拡大したのは、むしろなるべくエンジンを回さずに走るため。電動走行がより粘るようになり、エンジンがかかっても回転上昇が抑制されて、高効率かつ静粛性もアップしている。
レクサスLSについては、多くの専門家から乗り心地に問題アリと指摘されていた部分を、遅ればせながらではあるがきちんと手直ししてきた点を評価する。「なぜ最初からこのレベルで出せなかった?」という疑問は残るが、欠点を速やかに修正する姿勢は悪くない。
逆に、マイチェンで感心しなかった3台については、以下のとおり。
アテンザは技術陣が主張するほどシャシー性能(特に乗り心地)が向上していない。レジェンドは技術的にも走りっぷりも素晴らしいのに「なんでこのデザイン?」というアグリーフェイス。
キューブは中身の改良を放棄してグッドデザイン・ロングライフデザイン賞なんかもらって喜んでいる姿勢。これが筆者的にはバツなポイントですね。
【鈴木直也】
マツダは年次改良でも最新スペックに
今やマイナーチェンジで最も大切なことは「バージョンアップ」だと思う。特にここ2~3年、自動ブレーキの性能向上が格段に進んでいる。フルモデルチェンジのタイミングだと4~8年くらい進化しない、ということ。
一方、マイナーチェンジで自動ブレーキ性能を上げようとすれば、新しいハードに置き換えたり、キチンと稼働するかどうかの試験も必要。当然ながらコストかかる。つまり「事故を減らす」という社会的なニーズを、お金かけたくないので無視したワケ。
という観点からマイナーチェンジを検証すると、てんでアカンのがホンダ。最新のN-VANでは夜間の歩行者まで認識できるシステムを導入しているのに対し、売れ筋のヴェゼルですら旧世代のシステムそのまんま使い続けている。ホンダに聞くと「お金がかかるので」。
ダイハツも厳しい。今やお話にならないほど性能の低いシステム(追突抑止速度は40km/h以下)を使い続けている。日産は売れてるクルマにお金を掛けても、販売台数少ないジュークなど無視です。
一方、素晴らしいのがマツダだ。マイナーチェンジどころか、年次改良でも最新のスペックにバージョンアップさせている。今や世界中の自動車メーカーのなかで最も積極的と言っていいんじゃなかろうか。お金かけてます。
意外なトコロだとNMKVのeKとデイズ。マイナーチェンジで自動ブレーキシステムを一新。N-VANと並び軽自動車で最も性能良いシステムに変えた。アウトランダーPHEVの場合、外観変えたらフルモデルチェンジに近いです。
【国沢光宏】
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