これでは安心してクルマに乗れない! なぜ「整備士不足」は深刻に!? 疲弊する現場と低待遇改善のポイントを探る

■早い、安い、上手いが当たり前ではない

仕事はキツく、給料は安いと言われる自動車整備士。待遇改善には何が必要なのか(buritora@AdobeStock)
仕事はキツく、給料は安いと言われる自動車整備士。待遇改善には何が必要なのか(buritora@AdobeStock)

 では、待遇改善には何が必要なのか。

 まず、整備の売上によって自動車ディーラーの安定経営が約束されている現状を多くの人が理解し、整備士に還元することだ。

 現在、自動車ディーラーの多くは、一般管理費(毎月の事業継続に必要なお金)を中古車の売上、保険や割賦の手数料、そして整備の売上でまかなう体制に変えている。なかでも整備売上が占める割合は大きい。

 今の自動車ディーラーの経営は、新車利益に頼ったフロー型の経営ではなくなった。毎月の儲けが安定していて変わりにくい部門に一般管理費の支えを任せて、新車の売り上げをすべて利益にしようと考えるストック型の経営に変わったのだ。

 これに伴い、営業マンへの報奨金はわかりやすくなった。会社としても、新車の売り上げ=会社の利益なので、営業マンに何%還元しようかという発想になりやすい。対して、会社の維持に組み込まれた整備の仕事に対しては利益還元という考え方が働きにくくなる。

 基本給の部分では、ディーラーで働く整備士も営業マンも大きくは変わらない。ただ、報奨などの歩合部分が、給与の差を大きくする。会社の土台を支える整備士と、利益を生み出す(生み出しているように見える)営業マン。双方へ平等に利益が還元される仕組みをディーラーが作り出さなければならない。

 そして整備士の待遇悪化は、我々ユーザーにも責任がある。自動車整備が当たり前に「手早く、高い技術で、安く提供される」と思い込んでいる節はないだろうか。

 自分たちができないことを他人に頼み、それが質高く遂行されているのであれば、相応の時間やお金もかかる。私たちはこうした時間や技術に対して、充分な対価を当たり前に支払うという動きを見せなければならない。

 同時に、整備士の方々にもお願いしたい。一般ユーザーが「これは」と驚くような、技術力をぜひ磨いていただきたい。

 腕のいい仕事にはしっかりとした対価を支払うことが当たり前になる。何なら今すぐ独立しても「この人の整備を高いお金を払っても受けたい」とユーザーに思わせられるような整備士になってほしい。

 優秀で有能な人には会社も相応の報酬を払い、引き留める動きが必要だ。腕のいい整備士は自身で独立し、腕一本で商売してもいいと思う。こうした流れが一般化すれば、いい人材を確保するために、ディーラーも待遇改善に動かざるを得なくなる。

 筆者は、多くの整備士と一緒に仕事をしながら、大きな尊敬と憧れを持っていた。しかし、昨今では一部で自動車整備士を「もはや部品交換屋さん」「コンピューター繋ぎ屋さん」などと揶揄する声もある。

 ぜひ、こうした声を吹き飛ばしてもらいたい。ともに働いてきたなかで、筆者は自動車整備士を「職人」だと思っている。

 事の重大さに気づき、社会が動くのはもうしばらく先になるだろう。全国で働く自動車整備士の皆さん、この先の処遇改善にはご自身の判断と決断が必要となる。職人であり続けるために研鑽を続けながら、自身の価値を外へ伝える動きをして欲しい。

【画像ギャラリー】整備士の待遇いまだ改善されず!! 自動車業界の土台を支える整備士の技術に相応の労働環境と報酬を!!(6枚)画像ギャラリー

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