もはやレヴォーグ2.4Lターボのみが一縷の望み? 日本から「高性能エステート」がなくなってしまった理由

■日本の道路事情がハイパワーステーションワゴンと相容れなかった

三菱レグナムVR-4。こちらは最高出力こそ280sでレガシィGTと同じものの、2.5LV6ターボの威力で最大トルクはレガシィを凌ぐ37.0kgmを誇った
三菱レグナムVR-4。こちらは最高出力こそ280sでレガシィGTと同じものの、2.5LV6ターボの威力で最大トルクはレガシィを凌ぐ37.0kgmを誇った

 そしてそうなってくると、人は気づくことになる。「……あれ? 日本じゃどうせ大した速度なんて出せないんだから、速いけど狭いハイパワーステーションワゴンより、ちょっとくらい遅くても車内を広~く使えるミニバンとかのほうが賢いんじゃね?」と。

 日本が欧州のように「高速道路の制限速度は130km/h」「国やエリアによっては速度無制限」「高速道路料金は無料、または低価格(※最近は値上がり傾向だが)」であったならば、「遠くまで速く走れること」には大いに意味と価値がある。

 そして遠くまで速く走るためには、ミニバンやらSUVやらよりも空力特性に優れるステーションワゴンを選ぶことに、意味と価値が出てくる。

 だが日本では、新東名ができるまでは100km/hという、ある意味「蚊が止まりそうな速度」しか公には出すことができなかった。そしてそのような“低速”であれば、ミニバンなどの空力特性であっても特に大きな問題は生じない。

 そうなると「モノや人をたくさん載せられるミニバンまたはSUV」を選ぶインセンティブ(報酬)は上昇するが、ある意味“狭い”ハイパワーステーションワゴンを選ぶインセンティブが低下するのは自明の理なのだ。

 いや、もちろん「それでも俺はハイパワーワゴンが好きなんじゃ! ミニバンみたいなかったるい乗り物には乗りたくないんじゃああああ!」と叫ぶ人は、時代がどう変わろうとも、いつだって一定数は存在している。

■日本の自動車ユーザーは「浮動票」

トヨタ2代目カルディナGT-T。セリカGT-FOUR譲りとなる260psの2Lターボ、3S-GTEを搭載
トヨタ2代目カルディナGT-T。セリカGT-FOUR譲りとなる260psの2Lターボ、3S-GTEを搭載

 だが、そういった「確固たる信念」を持っているクルマ好きの数は――残念ながら――日本人の総数から考えれば激少でしかない。大半の自動車ユーザーは国政選挙の際の「浮動票」みたいなものなので、ハイパワーワゴンが流行ればそれを買うし、ミニバンやSUVが流行ればそっちを買う。そういうものなのだ。

 冒頭付近で「RVブームの成熟に伴って進行した『細分化』と、日本の道路の『遅さ』が、国産ハイパワーワゴンを殺した」と申し上げたが、よりシンプルに言い換えるなら「浮動票が獲得できなくなったことで、国産車メーカー各社はハイパワーワゴンの開発と製造をやめた」ということになるだろう。

 だが、ここで焦点となるのは「ではなぜ、輸入車には今なおハイパワーステーションワゴンが多数存在しているのか? 国産車のそれはほぼ消滅したというのに、なんかおかしいでしょ!」ということだろうか。

■日本においての輸入車のあり方

 気持ちはわかるが、これはおかしくもなんともない話である。

 輸入車には今なお数多くのハイパワーワゴンがラインナップされ、そしてそれがけっこう売れ続けている理由は、「最初から浮動票を相手にしていない=それが好きな一部の人だけを相手にしてきたビジネスモデルだから」だ。

 もちろん、近年は輸入車の各インポーターも「浮動票頼み」な側面をかなり強めてはいる。だが、基本的には「好きな人は好き」というのが、日本における輸入車という商品の根本だ。

 そのため時代が変わろうが何が変わろうが、最新型のメルセデス製ステーションワゴンも、1990年代のS124型Eクラスステーションワゴンが一部でよく売れたのとまったく同じように、一部でよく売れるのである。

 そして、「好きな人は好き」というのは、スバル車に対しても適用できる概念である。そのため、スバルには、今となっては唯一の国産ハイパワーステーションワゴンである「レヴォーグSTI Sport R」が、かろうじて存在できているのだ。

【画像ギャラリー】2022年現在では国内ほぼ唯一のハイパワーワゴン!! スバル レヴォーグSTI Sport R(6枚)画像ギャラリー

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

不死鳥のごとく蘇る! トヨタS-FR開発計画は再開していた! ドリキンこそレジェンドの土屋圭市さんがトヨタのネオクラシックを一気試乗! GWをより楽しく過ごす情報も満載なベストカー5月26日号、堂々発売中!