■BMW製となって3代目の現行型はどうか?
たしかにキビキビと走って安定性も高いが、僭越ながら現行型ミニを所有する筆者としては、「ゴーカート」というのは少々言い過ぎではないかと思うことがしばしばある。
たとえば、まだ英国製だったクラシックミニは、クルマの作りがゴーカート的であり、ゆえにフィーリングもゴーカートのようだったことにも納得できる。BMW製となった第2世代も、ボディサイズは全長が約3700mmで、車重は1200kg台と小型かつ軽量で、初代で実現していたゴーカートフィーリングはBMWの技術によってしっかりと再現されていた。
では、現行型はどうかというと、全長は4040mmに抑えているが、ホイールベースは先代型から100mm伸びて2565mmに達し、全幅は堂々たる1725mmとなって3ナンバー化され、車重は1300kgを超える。
「ミニなのにデカイね」と揶揄されることもあるが、サイズを拡大しながらも基本的なディメンションはミニらしさを継承している。しかしサイズの拡大、車重の増加が影響して、初代や第2世代のように、日常的な速度域でゴーカートフィーリングを体感することは叶わない。
あくまでもいちオーナーの個人的な意見だが、現代のミニにとってゴーカートフィーリングとは、クルマの特徴やキャラクターをわかりやすく伝えるための広告的表現、あるいはセールストークのひとつになっているように思えてしまう。もちろん、ワインディングやサーキットに持ち込めば真価を発揮するのだろう。その秘めた能力を引き出せない、オーナーである筆者の力量不足が大きな問題ではあるのだが……。
ヘボなオーナー(筆者)のドライビングテクニックはさておき、本来ミニに備わっているゴーカートフィーリングだが、要約すると以下のような運転感覚のことを指すことになる。
●キビキビと気持ちよく曲がる
●操舵に対して機敏で軽快
●高速でなくても爽快なスピード感が得られる
●クルマを操っている感覚が実感できる
■ゴーカートフィーリングはミニじゃなくても味わえる!?
こうした特徴を持つクルマならミニでなくてもゴーカートフィーリングを楽しむことができるはずだ。たとえば、ダイハツ コペンとかホンダ S660といった軽自動車のオープンモデルは、ボディが小さくて軽いから、操舵感はとてつもなく軽快だ。スポーツカーならであの着座位置の低さ、屋根を開けたときの爽快感もゴーカート的だ。
小型・軽量なスポーツモデルという観点では、スズキ アルトワークスのキビキビとした操縦性は、ゴーカートフィーリングと称しても差し支えないだろう。
スポーツモデルでなくてもいい。小さなクルマで、魅力的な走りを体感できることを基準とするなら、スズキ スイフトやマツダ MAZDA2、先ごろマイナーチェンジで復活したホンダ フィットRSも、ドライバーに気持ちのいい走りを提供してくれる。
エンジンは決して高出力ではないし、本格スポーツカーのようなメカニズムが与えられているわけではない。それでも、自らの手でクルマをコントロールしている感覚は、手に余る性能のすべてを引き出せない本格スポーツカーをドライブするよりも断然楽しいものだし、むしろクルマ好きの琴線に触れるはずだ。
ドライビングテクニックに自信があるなら、もう少しスポーティな特性を極めた車種を選ぶのもいいだろう。輸入車ならジョン・クーパー・ワークスとか、VW ポロGTI、フィアット 500アバルト、国産車ならスズキ スイフトスポーツ、トヨタ GRヤリスといった「山椒は小粒でもぴりりと辛い」と評されるクルマなら、さらに高い次元のゴーカートフィーリングが堪能できるのではないだろうか。
本格スポーツカーとは違って、実用性や居住性もしっかりと備えているからファーストカーとして選んでも文句はない。それでいて、いざというときはしっかりと非日常を味わわせてくれるのがいい。
ゴーカートフィーリングは、ミニのアイデンティティであり、もともとゴーカートのような運転感覚を指していたが、昨今は実用性や安全性の観点から、本当の意味でゴーカートフィーリングをリアルに体現するのは難しい。
それでも、その気になれば運転操作に対してダイレクトに反応し、軽快な走りを存分に引き出してドライブを楽しめるクルマが、ミニを筆頭に多数存在する。それらを手にして、その素性を引き出した時に、「これがいわゆるゴーカートフィーリングか!」を実感しつつ、ドライブを存分に楽しんでほしい。
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