■ホンダ初のステーションワゴン/2代目スーパーシビックシビックカントリー(95万円)
2代目はキープコンセプトだが、ステーションワゴンモデル、シビックカントリーが1980年に追加された。当時はオイルショックから日本が立ち直り、若者がアメリカのファッションを楽しみ始めた頃。雑誌『ポパイ』の影響で大学生はUCLAのトレーナーを着たそんな時代。
サイドの木目調プロテクションモールが特徴的なカントリーは、当時の自由な空気を表している。股間を熱くした若者が新島に押し寄せていたこの頃、サーフボードを積んだカントリーに乗っていたらさぞかしモテただろう。
リアシートは4段階にリクライニングし、たためばしっかりとスペースが生まれ、機能性は高い。ユーティリティの高さは今でも通用するくらい。今回乗ったなかで、一番持って帰りたいモデルだった。ホンダにはステーションワゴン作りを思い出し、カントリーのようなモデルを再び作ってほしい。
■初のDOHCモデルが追加/3代目ワンダーシビックセダンSi(146万5000円)
ホンダに憧れていた私が初めて買ったホンダ車がワンダーシビック、人気だった紺色の3ドア25iだった。
低くスクエアなフォルムは新鮮で、室内が想像以上に広かった。この3代目からシビックがメジャーになった。今回乗ったのはセダンのSi、1.6LDOHCエンジン搭載のスポーツモデルだ。快進撃を続けるF1の影響もあって、このエンジンの評判がよく、若者がこぞってシビックやCR-Xを買い求めた。
クルマがよくなったことは、2代目までと乗り比べてよくわかる。その一方で野性味は3代目からなくなっていくように思える。エンジンがよくなったぶん、走りに魅力が振られ、コンセプトのユニークさが薄れてきたように思った。
海辺で育った快男児が都会に出てきて、方言をしゃべらなくなったような印象を受けてしまった。これは、シビックがメジャーになった証拠でもあるのだが……。
■豊かさを実感させるが個性は薄まった/4代目グランドシビックSi(143万円)
■ミニバンやSUVがライバルに/5代目スポーツシビックSiR II(162万円)
4代目も5代目もいいクルマだ。走りが洗練され、居住性もよくなった。しかし、3ドアボディがミニバンやSUVの台頭の前に不利になっていく。それはそのままシビックの存在感が薄まっていくことになる。オデッセイやステップワゴン、CR-Vなどホンダ車はバリエーションを増やし、シビックを選ぶ一番の理由はスポーツ性能となる。
だからSiやSiRといったスポーツグレードにばかり注目され、シビックの安くて広くて低燃費というベーシックな性能が忘れられていったように思う。
今思えば、4代目にあったシビックシャトルやビークルをもっと本格的に作っておけば、SUVとしてのシビックの魅力が広がっていったかもしれない。
6代目以降のシビックは、グローバル化によって日本人の嗜好とのずれが顕著になる。5ドアになったり、セダンだけになったり、3ナンバーになったりと苦労し、9代目はいったん日本での発売を断念することにもなる。
いつの間にかシビックといえばタイプRと思われるようになってしまったことは残念だが、日本での販売を再開した10代目からはマスは狙わず、日常を大事にするおとなに、じっくり売ろうという姿勢になったのはいいと思う。
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