SUVらしさ全開だけど……「ブラック樹脂フェンダー」は劣化して白くなるのか!? 採用の是と非

■デメリットは無塗装ゆえの劣化問題

フロントガラス下、ボンネットとの境目に使われる樹脂パーツ。右側3分の1ほどが白っぽく色褪せているのがお分かりいただけるだろうか。カー用品店などで取り扱う白化除去剤を使用したのが左側。黒い光沢が復活するが、手間は少ないに越したことはない
フロントガラス下、ボンネットとの境目に使われる樹脂パーツ。右側3分の1ほどが白っぽく色褪せているのがお分かりいただけるだろうか。カー用品店などで取り扱う白化除去剤を使用したのが左側。黒い光沢が復活するが、手間は少ないに越したことはない

 しかし、高分子樹脂を素地仕上げで利用することはメリットばかりではなく、当然デメリットも存在する。それは紫外線による劣化が避けられない、ということだ。劣化は白化とも言われる白い変色で、その現象は高分子の分子鎖が断裂することで、そこに空気が入ってしまい白く見えてしまうものだ。

 カーワックスがボディの光沢を得る手段の主流だった頃はPPバンパーやフェンダーアーチモールのシボにワックスが入り込んで白くなってしまうこともあったが、コーティングが主流の現在は明らかに白化がPP素地仕上げを見すぼらしくさせてしまう原因だ。

 この白化も、最新のケミカル用品を使えばある程度カバーできる。市販の素地仕上げ樹脂コーティング剤でも白化を回復させて6カ月程度は維持してくれるが、プロの洗車屋が施してくれるセラミックコーティングで1年以上の保護効果を謳うところもあるようだ。

 洗車好きなら、3~4カ月に1度コーティング剤で保護してやれば充分に維持可能なので、手入れをすることが面倒でなければ、美観を保つことはできる。

 また、水で濡らして擦るだけで汚れが落とせるメラミンスポンジを使って、劣化した部分だけを落とすこともできる。しかもシボの印象はそのまま(徐々に薄れていくのだろうが)なのだから、こちらも手軽に利用できる白化を解消できる手段だ。

■PP素地仕上げは増やすべきか、減らすべきか

 PPはリサイクルしやすい素材であるから、どんどん採用すべきだと思うが、そのままでは高級感を醸し出すのは難しい。しかし、バンパー本体の素材としても使われるほど強靭で、造形が豊かに表現できるのは、プラスチックとしても優秀であることは間違いない。

 クルマのスタイリングへの素地仕上げでの利用は、あくまで部分的なものにとどめるべきで、現在のSUV人気とそのデザイントレンドから考えるとそろそろ上限と考えることができそうだ。

 また、塗装や接着が難しいという課題はあったのだが、それもプライマー(下地処理剤)や専用接着剤などの開発により改善され、原料への着色以外にも加飾が可能になり、補修も行えるようになった。

 PP樹脂の利用は幅広く、身近なところでいうとペットボトル(その名の通りボトル本体はPET樹脂)のキャップやコンビニのお弁当の容器(黒い下皿)などで、実はプラスチックのなかでは2番目に生産量が多い。

 石油というと、ガソリンばかりをイメージしがちだが、石油を原料とした製品は実に幅広い。石油からはガソリンなどの燃料以外にいろいろな副生物が取り出される。一気に石油の利用を減らすことができない以上、PP樹脂の利用を極端に減らすことはあまり意味のないことだろう。

 同じプラスチック製品に作り替えられるマテリアルリサイクルにも適した素材なのだが、まだ残念ながら燃料としてのリサイクルが主流なのである。利用を減らすよりもマテリアルリサイクルを増やしていくようにするのが先決だろう。

 PPの可能性を感じながら、リサイクルを推進するように利用者も意識することが大事だ。

【画像ギャラリー】ワイルドで実用的だけど劣化も気になる……エクステリアにブラックの樹脂製パーツを取り入れたクルマたち(8枚)画像ギャラリー

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