海自潜水艦に燃料電池は時期尚早!? 新型潜水艦「たいげい」型から見える潜水艦の動力事情

■原子力か、ディーゼルか、それとも?

 現在使用されている潜水艦の動力機関には次の3つのタイプがある。これらの内、原子力を動力機関として搭載する潜水艦を原子力潜水艦、それ以外の動力を搭載する潜水艦を通常動力型潜水艦と呼んでいる。

(1)原子力動力機関
原子炉の発生する熱を原動力とするもので、艦船に搭載される原子炉には加圧水型、沸騰水型の2つのタイプがあるが、ほとんどは加圧水型。そして原子炉の熱だけでは潜水艦を動かすことができないので、熱を動力に変換する蒸気タービンのような他の原動機を組み合わせる必要がある。

(2)ディーゼル動力機関
ディーゼル機関と電動機関を併用する方式(ディーゼル・エレクトリック方式)。内燃機関のディーゼル機関は燃料を燃焼させるために空気を必要とし、また燃焼による排気ガスを排出するので、潜水艦のような密閉された空間では、常に稼働させることはできない。そこで水上航行時にディーゼル機関で発電機を動かし、艦を推進させる電動機(電動モーター)を動かすとともに蓄電池の充電を行うのだ。そして潜水中には、蓄電池の電力で電動機を動かす。今日でも原子炉を動力源に用いることのできない国の潜水艦はこの方式が最も多い。

(3)外気独立動力機関(AIP:非大気依存推進)
外気を必要とせず常時潜航状態で駆動が可能な動力機関。潜水艦の動力として実用化されているものにはスターリング機関と燃料電池がある。いずれもディーゼル機関と組み合わせて使用されている。

1.スターリング機関……エンジン内部に密閉した気体を、加熱・冷却を繰り返すことで膨張・収縮させてピストンを動かすというもの。そしてエンジンにより発電機を回転させ、発生した電気で推進用の電動モーターを回す方式。

2.燃料電池……液体水素と液体酸素を燃料電池を介して化学反応させることで反応熱を電気エネルギーとして取り出し、配電盤の操作によって電池に充電したり、電動モーターを動かして推進力とする方式。

ディーゼル動力機関に加え、AIPシステムも搭載する「そうりゅう」型(写真/海上自衛隊)
ディーゼル動力機関に加え、AIPシステムも搭載する「そうりゅう」型(写真/海上自衛隊)

■原子力潜水艦と通常動力潜水艦、動力の違いはどう影響する?

 3つ紹介した動力装置の中で、もっとも隠密性が高いのは原子力動力機関だ。というのも、原子力潜水艦は、他の機関のように空気を必要としないため長期間の潜航が可能で、また機関を動かすための燃料が少なくて済むからだ。一度燃料を補給してしまえばほとんど再補給の必要がない。しかも非常に大きな発電量が得られるので艦内の電力をすべて賄え、さらには乗員のための酸素を発生させ水も潤沢に使うことができる。これらは通常動力型潜水艦では実現不可能であり、敵に対し自分の存在を隠すことが必須の潜水艦にとっては大きなメリットである。

 しかし原子力推進は騒音が大きく、原子炉から発生する放射能を遮蔽するために、鉛やコンクリートを使用するため重量や容積の増加となるといった短所もある。一般的に、静粛性に関しては通常動力型潜水艦のほうが原子力潜水艦よりも高い。

 一方、通常動力潜水艦はほとんどがディーゼル機関を主機としている。潜水艦がディーゼル機関のような内燃機関を主機として装備している以上、潜水艦にとって空気の確保という何ともしがたい問題が残ってしまう。このため潜水艦の作戦行動に大きな枷をはめることになる。これは技術が向上した現代の潜水艦でも解消できていない。ディーゼル機関が排気ガスタービンやターボ圧縮機の装備によって大出力を出せるようになり、シュノーケル装置の改良などで大幅に性能が向上してはいるものの、1日あたり2時間程度、急速充電ならば1日あたり20分程度(24時間ごとに20分程度)のシュノーケル航行が必要となるという。

 そこで水中でも動力として何とか潜水艦を稼働させる方法として考え出されたのが外気独立動力機関(AIP:非大気依存推進)である。とはいってもこれらは水中航行に限定して使用されるもので、ディーゼル機関との併用は欠かせない。

次ページは : ■海自潜水艦の動力装置の発展と進化

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

マツダ6、実は水面下で開発が続いていた!? 注目新車情報、グッズが当たるアンケートも展開「ベストカー4月26日号」

マツダ6、実は水面下で開発が続いていた!? 注目新車情報、グッズが当たるアンケートも展開「ベストカー4月26日号」

終売が報じられたマツダ6はこのまま終わるのか? 否!! 次期型は和製BMW3シリーズといえるような魅力度を増して帰ってくる!? 注目情報マシマシなベストカー4月26日号、発売中!