12段16段は当たり前!? 大型トラックが多段トランスミッションを採用する理由に迫る!!

多段化に不可欠な副変速機とは?

 8段以上の変速機は副変速機を伴うのが一般的だ。副変速機は通常2段で、ギア比を大きく変換する「レンジ」と、小さい変換でギア比を細分化する「スプリッタ」の2種類がある。

 例えば4段の主変速機にレンジギアを組み合わせた8段変速機では、ローレンジ+主変速機の4段が1〜4速、ハイレンジ+主の4段が5〜8速のギア比となる。つまり4速はローレンジの4速、5速はハイレンジの1速なので、4〜5速間の変速時にはレンジのロー/ハイ切り替え操作が必要だ。

 スプリッタのギア比は1.0前後の数値で、これを掛け合わせることで例えば主変速機の1〜2速が1速+スプリッタ・ロー、1速+ハイ、2速+ロー、2速+ハイの4段分に細分化される。この機構を前出のレンジ付き8段変速機に組み合わせれば16段になるわけだ。

UDトラックス クオンの7段MTと12段AMTの比較図
UDトラックス クオンの7段MTと12段AMTの比較図

 なお、単車系や2軸セミトラクタには3段の主変速機にレンジ・スプリッタを組み合わせた12段変速機が多く使われる。上の表はUDトラックス・クオンの7段マニュアルと12段AMTの比較図だが、12段AMTの各段のギア比に最終減速比を掛け合わせて7段と比べると、12段のほうがワイドレンジ化されているのがわかる。

 スプリッタは通常、主変速機の前後、クラッチに繋がる入力軸からカウンターシャフトへ回転力を伝える部分に搭載される。レンジは後段の出力軸に装着され、遊星歯車を用いたものが多い。レンジのギア比は通常ハイ側が直結(1.0)、スプリッタにはハイ側が直結のものとローが直結のものがある。

 主変速機の最高段は通常直結なので、スプリッタのハイ側を直結とすることで主/副変速機全体の最高ギア談が直結状態となる。入力軸と出力軸を直接つなげる直結段は変速機内のエネルギー伝達ロスが小さく、高速走行で使われる最高団を直結とすることで総合的な省燃費効果がもたらされる。

急速に進む変速機の自動化

 レンジ・スプリッタ付きの手動式多段変速機は以前から存在したが、操作は複雑かつ煩雑。日本では重量物運搬用のセミトラクタを除いてほとんど使われていなかった。近年普及が進んだ背景には電子制御技術の進化による変速操作の自動化がある。

 レンジ、スプリッタのハイ/ロー切り替えは早い段階でエア&電動化され、シフトレバー上のスイッチ(あるいはセレクト方向の操作によるレンジ切り替え)で操作できるようになっていたが、続いてエンジンと変速機の統合制御により主変速機のシフト操作と発進時以外のクラッチ操作を自動化したものが登場。

 さらに難易度の高かった発進時のクラッチ制御が自動化され、負荷と車速に応じた自動変速機能の導入によって運転者の変速機操作は不要になった。こうした手動変速機の操作を自動化したものを「AMT(オートメーテッド・マニュアル・トランスミッション)」と呼ぶ。

 トルクコンバータと遊星歯車式自動変速機による、いわゆるトルコン「AT(オートマチック・トランスミッション)」との差別化を図る意図もある呼称だが、最近は軽量化や効率向上、制御の緻密化のためにベースの手動変速機が存在しないAMT専用機が増えている。

 いすゞ自動車の「スムーサーFx」、あるいはZFの「TraXon」ロックアップ機構付トルクコンバータモジュールのように、クラッチ部分をトルクコンバータ(スムーサーFxはステータのないフルードカップリング)に置き換えて既存の変速機と組み合わせた独自のAMT専用機も存在する。

 多段変速機は変速頻度が増えるぶん、トルクが途切れる空走時間が長くなって加速性能に影響する。このため変速時間の短縮は課題の1つだ。

 AMT専用機の多くはシンクロメッシュ機構を省いてノンシンクロ化。変速時にはカウンターシャフト側の回転数をエンジン制御とカウンターシャフトブレーキによって制御し、出力軸側との同期を図ることでシンクロ式よりも短い変速時間を実現している。

 また、クラッチのダイヤフラムを操作するレリーズレバーを廃し、円筒形のエアバッグで変速機側から直接ダイヤフラムを押す機構も最新のAMTで採用が進んでいる。さらには2組のクラッチ〜カウンターシャフトを備え、クラッチの繋ぎ変えによって瞬時の変速を実現したDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)も実用化されている。

【画像ギャラリー】操作方法は無限大!! 国内外の大型トラック用多段トランスミッションのシフトレバーをチェック!!(11枚)画像ギャラリー

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