整備士不足問題への回答か? ASEAN出身の自動車整備エンジニアたちが増えている背景

■外国人労働者政策の大転換(特定技能)

ガレージフィックスの新氏(左)と、新たな在留資格「特定技能」を持つズオン氏(右)
ガレージフィックスの新氏(左)と、新たな在留資格「特定技能」を持つズオン氏(右)

 2017年に技能実習生の滞在期間が3年から5年に延長したが、期間延長による効果の検証もすることなく日本政府は、外国人労働者政策の大転換を行った。新たな在留資格「特定技能」を2019年に設けたのだ。

 今まで外国人の単純労働者の受け入れができなかった。そのため技能実習制度を使った事実上の就業が広がっていた。しかし、人手不足が深刻な14業種に対して、真正面から単純労働者に対して5年間の就労を認めた。

 特定技能は、技能実習生が移行することを基本形として想定されており、技能実習制度の5年と通算すれば、合計10年間働き続けることができる。日本における労働力の不足がそれほど厳しいということを政府も認めたものだと言え、自動車整備分野でも特定技能の活用が可能となった。

 この特定技能制度をいち早く取り入れ、上手にベトナム人を活用している企業が株式会社ガレージフィックス(百万社長、石川県金沢市)だ。

 日本で一番最初に特定技能(整備)を得たベトナム人はズオンさんだ。もともと、ガレーフィジックスに在籍していた技能実習生であった。外国人整備士の人材紹介を行う株式会社アセアンカービジネスキャリア(東京都中央区)のサポートで特定技能への移行が実現した。

 ガレージフィックスでベトナム人対応をしている新(あたらし)氏は、「ベトナム人の国民性は日本人に近いです。勤勉さ、向上心など、昭和時代の日本と同じような感じがして素晴らしいです。

 技能実習3年目が終わったベトナム人は、今まで帰国する必要がありました。ベトナム人が帰るということで日本人フタッフは仕事が回るか不安がっていました。特定技能は転職が可能で少し心配ですが、再び働いてもらえるのはいい制度だと思います」と語る。

 さらに「初めての技能実習生の受け入れでは、どのように伝えるかが大変でした。しかし、特定技能の人材がいれば楽です。特定技能までいけば、不自由なく日本語でコミュニケーションが取れます。技能実習生たちを全員取りまとめる立場になっています」と語る。

■新車ディーラーでも積極採用(高度人材)

トヨタモビリティ滋賀のベトナム人エンジニア
トヨタモビリティ滋賀のベトナム人エンジニア

 トヨタモビリティ滋賀株式会社(山中社長、滋賀県大津市)では、技術・人文知識・国際業務(通称、技人国:ぎじんこく)の在留資格を取得できたベトナム人自動車整備エンジニアを10名近く採用している。

 技人国ビザは外国人技能実習の実習生ビザや特定技能ビザとは異なる在留資格である。

 基本的に大卒資格か日本の国家整備士資格が必要で、高度の専門的知識と技術の裏づけをもつ人材のみに与えられる。就業期間や就業人数の制限も特にない専門的・技術的分野の在留資格となる。

 採用理由は、自動車整備専門学校からの日本人の新卒採用者の縮小を補うためだ。

 総務部長である小澤氏は「基本的に真面目で、周囲の人間とトラブルを起こすようなことはありません。就労姿勢に積極性があり、日本に馴染もうとする前向きな思いが感じられます。これからも継続して採用していけると思います」。

 更に、「技術的には機会ある毎に社内研修を継続するのはもちろん、最終的には、お客様のご要望の聞き取り、整備内容や料金の説明など、お客様と接し偏見を持たれることなくご理解いただけるような能力を身に付けてもらいたい。外国人であっても日本人と同様で甘えることはできません」(小澤氏)。

 全国自動車大学校・整備専門学校協会(JAMCA)が行ったアンケート調査によれば、7割の学校が留学生を受け入れている。

 自動車整備士専門学校に通う若いベトナム人留学生は「ベトナムの整備学校を出て整備の会社で働いていたけれど、日本の自動車整備の技術は高いので、もっと勉強したくて日本にきました」と語る。

 さらに「日本の整備士資格に魅力を感じている学生」が全体の半分近くを占めた。今後、日本で整備エンジニアを目指す外国人は増える可能性が高い。

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