タイヤ用艶出しワックスってなぜ水性が良いの?油性は本当にダメ?

油性ワックスの劣化促進は、石油系溶剤に起因

 油性のワックスがタイヤを劣化させる要因は、前述のとおりシリコンを溶かしている石油系溶剤が大きく影響しています。

 タイヤは、クルマの足元を支える重要な部品。高い強度と衝撃を吸収する柔軟性が求められるため、主原料である天然ゴムと合成ゴムのほか、用途や目的に応じて様々な補強材や配合剤が調合されています。

 なかでもゴムの劣化防止のために配合されている劣化防止剤や亀裂防止剤は、ワックスのような成分を含み、タイヤのサイドウォールから表面に滲み出て、柔軟性を維持して劣化を抑えるという重要な働きを担っていますが、油性ワックスで使われている石油系溶剤は、この劣化防止剤や亀裂防止剤と混ざると溶けだしてしまうため、頻繁に油性ワックスを使い続けることで、柔軟性が損なわれてゴムの劣化が加速、ひび割れなどを引き起こしてしまうのです。

 ブリヂストンやヨコハマタイヤのホームページでも、油性のタイヤワックスを使用する際には、ゴムの変質や劣化に影響を与えるので注意が必要、と記載されています。メーカーとしては、タイヤの本来の性能や耐久信頼性を損なうようなものは、使わないでほしいでしょう。早めにタイヤにひび割れが発生して、タイヤのせいにされては、困りますからね。

油性ワックスで使われている石油系溶剤が、タイヤ内部の劣化防止剤や亀裂防止剤と混ざることで溶けだしてしまうため、劣化が進んでしまう(PHOTO:Adobe Stock_ Norikko)
油性ワックスで使われている石油系溶剤が、タイヤ内部の劣化防止剤や亀裂防止剤と混ざることで溶けだしてしまうため、劣化が進んでしまう(PHOTO:Adobe Stock_ Norikko)

水性と油性の弱点を軽減する中性タイプも登場

 以上のような油性ワックスによる劣化のリスクを考えて、タイヤ用ワックスは水性ワックスを使う人が多いようですが、水性ワックスでは物足りない、鮮やかな艶感を求める人も少なくはありません。そこで登場しているのが、油性ワックスのような艶感を持ちながら、タイヤの劣化のリスクを減らしたワックス。例えば、タイヤアタックのない水性ワックスでシリコン含有量を増やして、コーティングを厚くして油性のような鮮やかな艶を出したものが、(高価ですが)商品化されています。

 また、シリコンオイルを使った艶だし剤を利用して、中性タイプと呼ばれるタイヤワックスも登場しています。鮮やかな艶感を実現しながら、石油系溶剤を使ってないので油性でなく、また水も使ってないので水性でもない、新しいタイプです。

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 キラキラした光沢が苦手で、自然な仕上がりを好む人であれば、劣化の心配のない水性ワックスを選ぶのが安心です。どうしても、艶のある光沢が欲しいなら、ワックスの成分をしっかり確認して、その特性を把握したうえで使用するようにしてください。

【画像ギャラリー】タイヤ用艶出しワックスって、水性じゃなきゃダメ!??  水性ワックスと油性タイヤワックスの違いと最近の動向(8枚)画像ギャラリー

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