■政治的な動きと投資市場の融合が主なEV普及の要因だった?
2022年がまるで、EV普及元年のような市場動向になった直接的な原因は、ESG投資である。
ESG投資とは、「従来の財務情報だけではなく、エンバイロンメント(環境)、ソーシャル(社会性)、ガバナンス(企業統治)を重視した投資」を指す。つまり、企業が経営を考える際、目先の利益や売上だけではなく、ESGに係る中長期的な事業展開をすることが株価に直接影響するということだ。
最近、日本でもSDGs(国連の持続可能な達成目標)が話題となることが増えているが、ESG投資は当然SDGsとも直結する話である。
このESG投資が2010年代後半からグローバルで大嵐のように吹き荒れたことで、国や地域で一気にEVシフトすることで環境対策と経済効果の両輪を一気に回していこうという政治的な動きが強まったのだ。
代表的な事例が、欧州連合(EU)の執務機関である欧州委員会(EC)が推進している、欧州グリーンディール政策だ。
さらにくわしく見ると、同政策の中に「フィットフォー55」という法案があるのだが、これは欧州内で販売する乗用車と小型商用車のCO2削減目標を2021年比で2030年に55%減、そして2035年に同100%減と定めている。
この100%減とは事実上、EVとFCVのみが対象となり、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車は含まない。
ただし、直近ではカーボンニュートラル燃料のあり方なども議論されるようになっているため、欧州グリーンディール政策が段階的に修正される可能性はあり得ると思われる。
いずれにしても、欧州自動車メーカーとしては地元欧州内でのEVシフトへの対応が急務であり、そのなかでボルボやランドローバーのように完全EVブランドに転身するケースも出てきた。
そのため、今後も欧州メーカー各社の新型EVが日本に続々と上陸してくることになるだろう。
また、欧州グリーンディール政策の影響はアメリカにも及び、2021年8月にバイデン大統領が自動車の電動化に関する大統領令を発令した。内容としては、2035年までに乗用車がSUVなどライトトラックの50%以上を電動化するとしている。
ここにはプラグインハイブリッド車は含まれるという解釈であり、欧州に比べるとEVシフトの流れは若干遅い。
こうした欧米市場でのEVシフトに対して、欧米での販売台数が多いヒョンデがEVやFCVの開発や販売に積極的になるのは当然のことだと言える。そのうえでEVシフトがこれから加速すると予想される日本市場で、他社が未導入の完全オンライン販売という独自戦略で新規ユーザーの獲得を狙っているのだ。
また、中国では2000年代から国策として各種のEV普及政策が講じられてきた。さらに自動車産業前提で見ると、近年はこれまでの中国内での地産地消型から輸出強化型へのシフトが進んできている。そうしたなかで、中国でのEV先駆者と言えるBYDが日本市場への挑戦を開始することになる。
■どういう戦略をしていくべきか? 日本は社会体系の大転換が必要
以上見てきたように、日本ではこれから国内外メーカーを問わずさまざまなEVが販売されていくことになりそうなのだが、国としての受け入れ態勢は未だ不十分と言わざるを得ない。
そもそも、日本ではEV普及について、国の達成目標はあるものの欧州のようなEV義務化の方針ではない。日本自動車工業会では、水素燃料車なども含めて多様なエネルギー源の並存を考慮するべきという姿勢だ。
いっぽうで、2022年12月に与党がまとめた令和5年税制改正大綱の中で、2026年4月末までに車体課税の抜本的な見直の検討を明記し、そのなかで電動化について触れている。
CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリングなどの新サービス、電動化)に関連した産業競争力強化、また高齢化が進む社会への公共的な移動のあり方など、社会全体として変革を踏まえた税制のあり方を議論していくという考えだ。
日本ではこれから、自動車メーカー主導ではなく、自動車ユーザーも交えた社会変革の議論の中で、日本でのEVのあり様が見えてくるのだと思う。
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