最近は見かけなくなったクルマのアンテナ、いまどうなったのか?

1990年代~:フィルムタイプが登場

 1990年代には、フロントウィンドウ、もしくはリアウィンドウに貼り付ける「フィルムアンテナ」が登場。フィルムアンテナは、透明のフィルムに針金状の細いアンテナ線を組み込んだものです。クルマのボディに影響を与えない理想的なアンテナですが、高価な割にはラジオの受信感度が低く、普及には至りませんでした。当初はカーラジオ用として誕生したフィルムアンテナですが、現在は主として、地デジTVの電波受信用として活用されています。

フィルムタイプのアンテナ。日産ノートの場合、リアサイドガラスの内側に、アンテナ線が仕込まれている
フィルムタイプのアンテナ。日産ノートの場合、リアサイドガラスの内側に、アンテナ線が仕込まれている

2000年代~:コンパクトポールタイプが登場

 2000年に入って登場したのが、長さ20cm程度の「コンパクトポールアンテナ」です。コイル状のアンテナを樹脂製のカバーで覆ったタイプで、伸縮はできませんが、可倒式で取り外しが可能。アンテナの長さは短いですが、コイルアンテナの進化によって、短くてもロッドタイプと同等の性能が確保されています。

 ポールアンテナは、ルーフの前方センターや後方センターに装備されることが多いですが、小型であるため場所を選ばず、どこでも容易に装備でき、比較的安価なので、現在は軽自動車やコンパクトカーでは主流となっています。

軽自動車やコンパクトカーで主流のコンパクトポールタイプのアンテナ。比較的低コストで装着の自由度が高いのが特徴(PHOTO:写真AC_自然体)
軽自動車やコンパクトカーで主流のコンパクトポールタイプのアンテナ。比較的低コストで装着の自由度が高いのが特徴(PHOTO:写真AC_自然体)

2000年代~:ドルフィンタイプが登場

 現在最も普及しており、今後も普及が期待されるのが、イルカやサメの背びれのような形状の「ドルフィンアンテナ」や「シャークフィンアンテナ」とよばれるタイプです。2001年に登場した4代目「BMW 7シリーズ」で初めて装備され、日本では2005年の「レクサスIS」を皮切りに、現在はセダン系やSUV系のほとんど、そして軽自動車の一部でも採用が進んでいます。なかには日産のアリアのように、ダブルシャークフィンアンテナを装着するクルマも登場しています(プロパイロット2.0装着車において、準天頂衛星の情報を取得するため)。

 実はレクサスISのアンテナは、ラジオ専用ではなく、当時レクサスが提供していたテレマティクスサービス「G-Link」用の通信アンテナでした。テレマティクスだけでなく、ナビゲーションのGPS、リモンコンキーなどの様々な無線の送受信を行う、多機能インテリジェント・アンテナの先駆的なアンテナだったのです。

 ドルフィンアンテナのメリットは、先の多機能性に加えてスタイリッシュなデザイン性です。ただし、ボディ色に合わせた塗装などによってコストが上がり、ポールタイプとフィルムタイプの中間のコストがかかるので、今後はコスト低減と小型化が普及のカギを握っています。

ホンダN-WGNは、軽自動車としては珍しくドルフィンアンテナを採用
ホンダN-WGNは、軽自動車としては珍しくドルフィンアンテナを採用

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 デザイン性や空力性能などを犠牲にせず、多くの機能を小さなスペースに配置しなければいけないアンテナ。最終的には、さらに小型化が進んで、エクステリアから消え去ることが理想かもしれません。

【画像ギャラリー】金属棒から、ドルフィンタイプまで!! 車載アンテナの歴史(8枚)画像ギャラリー

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