世界3位のマーケットで日本のEVは生き残れるか? インドで加熱する日中韓の最新技術

世界3位のマーケットで日本のEVは生き残れるか? インドで加熱する日中韓の最新技術

 急成長を遂げているインドの自動車市場は、今や世界第3位の販売台数を誇るマーケットとなっている。その街並みを走るクルマを眺めていると、ガソリン車に関してはマルチスズキを筆頭に日本車が目立っている。しかし、電気自動車に関しては、中国・韓国が大きなシェアを持っているという。

文、写真/小林敦志

■世界第三位の新車販売市場となったインド

右側トヨタ エティオス、左側スズキ スイフト(日本車だらけ)
右側トヨタ エティオス、左側スズキ スイフト(日本車だらけ)

 自販連(日本自動車販売協会連合会)によると、登録車と軽自動車を合算した2022暦年(2022年1月~12月)締めでの日本国内の新車販売台数は約420万台となった。

 一方インド自動車工業会(Society of Indian Automobile Manufactures)によると、インド国内での2022暦年締めでの四輪車の新車販売台数が約473万台となり、世界第三位の新車市場であった日本を抜き、中国、アメリカに次いでインドが世界第三位の新車販売市場となったことが年明け早々に世界で報道された。

 そのような報道があった直後、インドの首都デリーに筆者は降り立った。インド政府は2030年までに自家用車の30%、商用車の70%そして2輪車の80%をBEV(バッテリー電気自動車)化することを目標としている。

 前回2020年に訪れた時にすでに車両電動化について政府は言及していたものの、デリー市内はおろか当時デリー近郊で開催されていたオートエキスポ2020(デリーオートエキスポ2020)の会場内で展示されていた最新モデルのほとんどはICE(内燃エンジン)搭載車であった。

 「BEVの普及の前に家庭や企業向けの電力供給では停電も頻発するので、まだまだBEVの普及は遠い道のりだ」といった声も当時は多く聞かれた。

■コロナ禍を挟んで一変! 多数のBEVが溢れるインド

ヒョンデ コナEV
ヒョンデ コナEV

 しかし今回デリーを訪れると、デリー市内は東京よりも多数のBEVで溢れていた。

 インド政府の2030年までのBEV普及目標で70%を掲げていた商用車、なかでも路線バスやデリーではタクシー代わりとして街にあふれるライドシェア車両(四輪車)の一部、そしてオートリキシャと呼ばれる三輪タクシーの一部などで目に見えてBEVが増えていっていたのである。

 自家用車レベルでは、諸外国ではBEVといえばテスラ車が目立つのだが、インドでは地元インドメーカーである“タタ”のコンパクトクロスオーバーSUVタイプの“ネクソンEV”を滞在中によく目にした。

 あとは韓国のヒョンデ、そして中国のMGといったブランドのBEVも目にすることができた。日本及び世界市場の状況と同じく、当然の話といっていいが日本車はインドでもBEVを苦手としており、滞在中に日本車のBEVを見かけることはできなかった。

 インドにおいてもBEVはICE(内燃エンジン)搭載車に対して車両価格は高くなっており、インド政府や地方自治体では購入補助金などのインセンティブを実施している。

 ただしインド政府がBEVをメインにゼロエミッション車普及に熱心な最大の理由は、欧州のような先進諸国が地球環境問題といった壮大なテーマとしているのに対し、自国の深刻な大気汚染問題の改善と言う側面の方が大きいようだ。

 筆者もマスクを着用しながら幹線道路沿いをしばらく歩いていたら喉が痛くなった。月曜から土曜は天気予報上“晴れ”となっていても、晴天といてもスモッグにより青空を見ることはほぼできない。

 大気汚染対策のほかには、昨今の原油価格高騰への対策として普及が加速を見せているように感じた(国内での自然エネルギーや原子力発電による電力供給で賄う)。

 大気汚染対策に重きをおくため、インド政府では同時進行としてフレックス燃料へのエタノール混合燃料対応の普及も進めている。2023年4月からはE20(エタノール20%混合)燃料の一部ガソリンスタンドでの取り扱いを開始する。

 そして予定より5年前倒しとなる2025年までにはガソリン車ではE20対応を目標にフレックス燃料対応エンジン生産を義務付けるとしている。原油輸入量の抑制と自然環境への配慮という導入理由は車両電動化と政策としては一致しているともいえよう。

次ページは : ■様々な可能性を模索するインドの自動車業界

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