どうなる!? ガソリンエンジンでもEVでもない選択肢! 水素エンジンの現在地

■課題はあるが期待したくなる水素カーの魅力

 環境負荷を減らせるという点で、既存の内燃機関よりも有利だが、普及が進まない理由としては、やはりインフラ整備が追いついていないことに尽きる。

 水素燃料を補給できる施設である「水素ステーション」は、首都圏、中京圏、関西圏、九州圏の四大都市圏と、四大都市圏を結ぶ幹線沿いを中心に整備が進められているが、全国に163カ所(2023年1月現在)しかない。移動式ステーションも稼働しているが、1994年度をピークに減少していると言われているガソリンスタンドの2万8475件(2022年3月現在)と比べても圧倒的に少ない。

 国の補助金制度の後押しもあって2022年3月末の時点で2万1198カ所に拡大した電気自動車の充電スポットと同様に、今後増えていくことが予想されるが、水素ステーションの場合は、1件ごとにガソリンスタンドの約5倍もの建設費用がかかると言われており、充電スポットのようにコンビニやショッピングモールの駐車場に設置することが叶わない。

 ひとつの都道府県あたり3件から4件程度という状況では、どんなに優れた性能を持ち、それが既存の市販車と同等の価格で購入できるようになったとしても、「次の愛車は水素にするか」とはなりにくいのではないだろうか。しかも水素は製造、輸送、貯蔵のそれぞれのプロセスでコストがかかり、ガソリンや天然ガスと比べて割高であるという点も無視できない。

 燃料電池車のMIRAIを見てもわかるとおり、既存のクルマに比べて車両価格が高額になることも、ユーザーにとってはネックになる要素と言える。

脱炭素社会が到来しているとはいえ、内燃機関の楽しみである音や振動は捨てがたいものがある。これらをこの先も残すために水素エンジン車の開発に注目していきたい
脱炭素社会が到来しているとはいえ、内燃機関の楽しみである音や振動は捨てがたいものがある。これらをこの先も残すために水素エンジン車の開発に注目していきたい

 トヨタの水素エンジン車の市販化に向けた取り組みを見てみると、車両開発は着実に歩みを進めていることがわかる。レースでは水素エンジンカローラの航続距離向上を目指し、液体水素搭載技術への挑戦も始めている。気体水素よりもエネルギー密度が高い、液体水素を水素エンジンと組み合わせることができれば、航続距離がガソリン車に近づき、水素ステーションは現在の約1/4の面積で運用できるようになるという。

 こうしたトヨタを中心とした自動車関連企業は、自社が持つ技術でできることに全力で取り組み、ユーザーの選択肢を増やそうと奮闘していることを鑑みると、水素エンジン車が期待はずれなクルマにはならないだろうと期待したくなる。ただし、こうした企業の努力に対して、国や自治体はどのように主導していくのか。それこそが水素エンジン車の進化や本格普及に向けたカギになるのではないだろうか。

【画像ギャラリー】クルマの魅力を改めて知ることができる水素エンジン車を写真で見る!(6枚)画像ギャラリー

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