■クリーンディーゼルはやはりマツダ
(TEXT/鈴木直也)
トヨタほど巨額の研究開発費を使うメーカーが、ディーゼルに関して遅れをとっているとは思わないが、残念ながら市場環境が変わった。
乗用ディーゼルの本場は欧州だが、昔はトヨタがミニ用のディーゼルを供給していた時代もあったのに、最近は逆にBMWからのOEMをレクサスISに搭載するといった状況。
きっかけとなったのは、もちろんVWのディーゼルゲート事件だが、あれ以降とりわけ欧州市場でディーゼル車の販売が減少。厳格化された環境規制によって排ガス浄化システムのコストもうなぎ上りで、欧州におけるディーゼルは採算の取れない事業になりつつあるのが実情だ。
対照的に、この市場環境の激変前に一定のシェアを取れたことがマツダにとっては幸運だった。とりわけ国内市場ではディーゼルはマツダのほぼ独占市場。いわゆる「最後の1席」を確保したわけだからライバルが新規に参入することもなく、とうぶんマツダの安定飛行は続くと思われる。
この明暗を分けたのは、マツダが独自に開発した低コストな排ガス処理技術だったわけだが、ここはトヨタとしても「一本取られた」というのが本音。乗用ディーゼルを背水の陣で開発していたマツダと、本命はハイブリッドでディーゼルは傍流と考えたトヨタでは、開発者のガッツが違っていたのかもしれない。
国産ディーゼル技術をランク付けするとしたら、やっぱりマツダが大差でトップ。いま国内で買えるトヨタの乗用ディーゼル車というと1GD-FTV型搭載のプラドくらいだから、しょうがないね。
【番外コラム】 現在のトヨタは「80点主義」!? トヨタのクルマ作りを考える
(TEXT/鈴木直也)
トヨタの「80点主義」については昔から議論があって、つまりは「80点取れれば充分」という現実論と「100点を目指さないのはガッツがない」という理想論のせめぎあいだ。
高度成長期の日本では、たぶん後者の理想論に共感する人が多かったんだと思う。トヨタの保守的な開発手法はクルマ好きには物足りなかった。だから「80点主義」という、なかば揶揄するような表現が生まれたわけだ。
21世紀の今日ではどうだろう。昔からトヨタは顧客満足度を大事にしてきた。ユーザーニーズがどこを向き、コストパフォーマンス的にどのレベルの商品を求めているか。最近はそこを精密に予測したクルマ作りに、さらに磨きがかかっているように思われる。
だから、コストに糸目をつけなくなった最近のレクサスも、あえてBMWの協力を仰いでスープラを復活させたのも、そこにユーザーニーズがあるとトヨタが判断したから。長年磨き上げた商売の勘がそう判断しているわけだ。
開発の現場の人たちを見ていると、最近のトヨタは以前より攻めている印象があるが、つまりは最近のユーザーはそういう「攻めたクルマ」を望んでいるということ。昔のトヨタは誰にでも好かれる八方美人だったが、これからは好き嫌いが分かれても、トンがったクルマ作りに変わってゆくんじゃないでしょうか。
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