ホンダアクセスが手がける純正コンプリートカーとして人気のモデューロX。そのモデューロXが誕生から10周年を迎え、3月5日に東京・代官山でオーナーを迎えた記念イベントが開かれた。開発統括者やドリキン土屋圭市さんも参加して盛り上がりまくったその中身をお伝えしよう!
文と写真/ベストカーWeb編集部
■モデューロXのために家まで建てた人も!
3月5日、午前7時。イベント会場となった代官山T-SITEの駐車場に、S660やN-ONE、フリードといったホンダ車が続々と集まってきた。ただのホンダ車じゃない。ホンダアクセスの開発陣が独自の「魔法」をかけたコンプリートモデル、モデューロXたちだ。
そもそもモデューロXは2013年1月、初代N-BOXをベースに1号車が生まれた。以来N-ONEやステップワゴン、S660、フリード、フィットなど、10年に渡って優れたモデルを送り出してきたわけだが(現在までに7車種11モデル)、どのモデルにも共通しているのが、オリジナルとはひと味もふた味も違う個性と、人の感覚を重視するクルマ作り。そのガンコなまでのこだわりが大勢の人を魅了し、日本中に熱いオーナーを生んでいるのだ。
「モデューロXシリーズ10周年記念モーニングクルーズ」と題したこの日のイベントは、そういったオーナーに日本各地から集まってもらい、モデューロXの魅力を再確認すると同時に、開発陣や仲間同士で交流を深めてもらおうというもの。今回は抽選によって50名が招待されたが、ナンバーを見ると平泉や神戸といった遠方から来られた方もおり、参加者たちの熱気がひしひしと伝わってくる。
T-SITEの駐車場が50台のモデューロXで埋まり、いよいよイベントがスタート。エリアを分けて、モデルごとに並べられたモデューロXは圧巻で、どのクルマも凛々しく、自信に満ちているように見える。
そんなクルマたちの間を、モデューロXの開発陣が歩き回っている。開発統括を務める福田正剛さんに完成車性能担当の湯沢峯司さん、開発アドバイザーの土屋圭市さんといった面々だ。参加者たちはフランクに声をかけ、愛車に関する思いや要望を伝える。開発陣も同じ目線で、いっしょにクルマのボンネットを開けたり、下回りをのぞき込んだりしながら、和気あいあいとやりとりをしていた。
ホンダアクセスのイベントはいつもそうだが、参加者と開発陣の距離が近い。ユーザーの声をきちんと受け止めているところが、モデューロXのブレないクルマ作りの大切な要因になっているのだろう。
ベストカーWebも大勢のオーナーに話を聞き、皆さんのモデューロ愛に圧倒された。中でもすごかったのがS660モデューロX(I型)で神奈川県から参加された佐藤孝仁さん。
もともとノーマルのS660に乗られていたそうなのだが、モデューロXに乗り換えたことで運転の楽しさに開眼。一生このクルマと付き合うべく土地を探し、現在ガレージハウスを建築中なのだという。スマホで家の図面を見せてもらったが、ガレージはまさにS660モデューロXのための専用設計。ご本人は「これ以上大きいクルマは入らない」と謙遜されていたが、いやいや、これこそ大人の秘密基地だと胸を打たれた。モデューロX恐るべし!
■モデューロXはレーシングカーより大変!?
駐車場で大いに盛り上がった後は屋内に場所を移し、開発陣によるトークショーが行われた。カーライフジャーナリストのまるも亜希子さんが進行で、先ほどのお三方がマイクを握るという趣向だ。
10年という歴史を積み上げてきたモデューロXだけに、トークの中身は濃密そのもの。中でも胸を打ったのは、それぞれのモデューロXが世に出るまでの過程だった。
土屋圭市さんは「10年はあっという間だった」といいながら、モデューロXの開発を「レーシングカーより大変」と語った。自身が一番好きなモデューロXはステップワゴンだというが、そこでは「お父さんだけが気持ちいいクルマを作っちゃいけない」と肝に銘じたという。「2列目に座る人のジュースがこぼれたり、ポップコーンが飛んだりしないクルマ」を目指し、途方もない数のセッティングを試した結果、うねったような路面でもタイヤが追従し、ビシッとした安定感のあるモデルができたそうだ。
土屋さんから「しつこくてうるさいし、こだわりの塊」とイジられた福田さんは(笑)、10年間を支えてくれたオーナーたちに感謝を述べた後、「道から教えられること」の意義を語った。モデューロXの開発では、デザインを手がけるスタッフまでがテストコースへ出向き、実際にクルマを走らせながら試行錯誤を繰り返すことで知られる。
そんなテストのエピソードとして、福田さんはこんな話をされた。「土屋さんがうねり路を走るシーンを伴走して収録するスタッフが、どうしても同じ速さで走れない。本番が翌朝に迫る中、何度も何度も何度も試走を繰り返し、結局足回りとアクセルワークの協調だと気づいたんですね。彼は今、バイクのダンパーのオイル漏れが分かるくらい足回りに敏感になりました。人って経験で変わるんですよ」。クルマはもちろん、人も鍛えられる開発の現場とは、厳しくも羨ましい世界だと思った。
いっぽう、3名の中では「若手」となる湯沢さんは、福田さんと土屋さんのふるまいや言葉を理解することからモデューロXの開発が始まったという。一番気に入っているモデューロXはS660 だというが、このクルマを作りときに考えたことは「タイプRを作っちゃだめだ。GTカーを作らなきゃ」だったそう。「後輪の蹴り出しを楽しめるクルマ」を理想としたというが、S660モデューロXの走りは、まさにその理想が形になったといえるだろう。
いっぽうこんな話も。湯沢さんの仕上げたクルマの出来について、福田さんはいつも多くを語らず「これでいいと思うか?」とだけ問うのだそうだ。時には5分間も沈黙が続いたあと、湯沢さんは一人でガレージに戻り、黙々と手を動かし始める。夕方になると湯沢さんの姿を見た仲間が集まり始め、再び次の試作車が作られていく。昭和の職人の世界を思わせる光景が頭に浮かび、ちょっとホロっとしてしまった。
最後はプレゼント大会まで行われて、無事に幕を閉じたモデューロXのモーニングクルーズ。各地から代官山に駆けつけたオーナーたちも、さまざまな経験ができて大いに満足したのではないだろうか。なによりも確信したのは「モデューロXなら間違いない」という安心感。半導体不足といった厳しい現実も続いているが、今後も多くの人たちをうならせる傑作が登場することに期待したい!
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