かつてマツダの新車は「大幅値引き」が代名詞となっており、数十万円引きといった数字が全国の読者から報告があった(高級車ならまだ分かるが総額300万円代前半級のクルマでもそれくらの値引きが飛び交っていました。すごい時代ですよね…)。そうなると下取り価格も下がり、一度買うとマツダ車を乗り継がざるをえない状況に(クルマの出来はよかったので)。そんな「マツダ車ループ」というような実例が90年代後半~00年代前半まで続いていたのだ。今やすっかり高級ブランドになったが、あれは一体なんだったのか!?
文:小鮒康一/写真:ベストカーWeb編集部
■5チャネル体制の失敗でユーザーも悲劇!! 長く続く負のスパイラルに
最近では黒を基調としたシックな店構えを持った店舗も増えているマツダディーラー。車両のラインナップもミニバンや商用車の自社開発・生産を中止し、「魂動デザイン」と呼ばれるエモーショナルなデザインを纏った車種が中心となっている。
これは万人受けするクルマではなく、一部のユーザーにとことん刺さるクルマを作るという、いわゆる“選択と集中”を実施した結果であり、現在はそんなマツダの考え方に共鳴するユーザーが増えてきている印象だ。
しかしそんなマツダも、80年代後半から90年代にかけて販路を拡大しようと5つの販売チャネルを設置。チャネルごとに異なるキャラクターを持った兄弟車を多く配置するなど、万人受けを狙ったこともあった。
ただその拡大路線は成功することなく、経営が傾くほどの大打撃を。当時のマツダユーザーも抜け出すのが大変な無限回廊に迷い込むこととなってしまったのである。
■同じ予算で上級者も射程圏内に!? 大幅値引きの功罪
当時のマツダの経営危機の話をする上で避けて通ることができない“ユーザーの悲劇”。これは果たしてどういうことを指しているのかを解説しよう。
当時多数の兄弟車種を乱発したのだが、残念ながら多くの車種は市場に広く受け入れられることはなく、平たく言ってしまえば“不人気車種”となっていた。
消費者側も同じクラスの車種で魅力的なモデルが他メーカーに存在していれば、わざわざ不人気なマツダ車を選ぶ可能性は低い。そこでマツダディーラーが採った作戦は“大幅値下げ”で車両を販売するという手法だったのだ。
クルマに強いこだわりを持つコアなマニアであれば、いくら値引きするとはいえ、不人気な車種を選択することはほとんどないはず。だが、なんとなく移動の手段としてクルマを探しているというユーザーにとっては価格が安いというのは魅力的なもの。
場合によっては他メーカーよりも1クラス上の車種が同じ予算で狙えてしまうということもあったようで、価格に釣られたユーザーがマツダ車を購入するというケース少なからず存在していたのだ。
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