■ベースはZ30ソアラだが、低重心化と前後重量配分の改善を実施
このエンジンにゲトラグ社製の6速MTがドッキングされ、もちろんエンジン縦置きのFRだからシフトレバーもトランスミッションに近く、剛性があってカチッと決まるスポーティな操作感も魅力だったのだ。
80スープラのシャシーはZ30系ソアラのシャシーを流用している。前後ダブルウィッシュボーン式サスペンションを採用していて、フロントアッパーアームはアルミ鍛造でローマウントに改良。ソアラとの違いは全長が短くなったことにより、ガソリンタンクがトランク下に搭載されている点。
ソアラはトランクを隔てるリアバルクヘッドがあるのでリアシート背後に配されていた。つまり、80スープラではガソリンタンクの低重心化と前後重量配分の適正化が行われたわけだ。
その80スープラのハンドリングはレーシングドライバーの筆者から見ても当時としてはかなり進んでいた。タイトコーナーのターンインではブレーキの残し方によってはオーバーステアにも持ち込め、立ち上がりではリアガソリンタンクの重量を利用したトラクションがあった。
ま、ガス満にしていればの話だが、ガソリンの量にハンドリングが左右されるところはポルシェ911のようで(RRのポルシェ911はタンクが前だが)ドライバーを選ぶようなプロっぽさも魅力だった。
トラクションのあるリアサスだが、トルクがあってピックアップの鋭いエンジン特性のおかげでパワーオーバーに持ち込むことも難しくなく、その後のオーバーステア状態のコントロール性も悪くなかった。
■故・成瀬弘氏のテストドライバートレーニングに3度呼ばれた筆者
アクセルとステアリングで操る自在感が楽しかった数少ないFRモデルだったといえる。それゆえに2002年に生産終了となった後も、トヨタ内部で富士スピードウェイでのドライバートレーニング用として長く使われてきたのだ。
余談だが、筆者は当時のトヨタマスターテストドライバーだった故・成瀬弘氏が催すトヨタ車内のテストドライバートレーニングの場に3度呼ばれたことがある。ちょうど筆者がインディ500(米国)に参戦していた時期で、超高速でのレースの世界観やセッティング、コントロールを伝えてほしかったのだろう。
場所は袋井テストコース×2度、そして最後は真冬の圧雪された北海道の士別テストコースだった。どのトレーニングも筆者がドライブする横にテストドライバーが座り、筆者の好きなように走るというスタイル。
当初は80スープラのベースともなった先代型となる70スープラを使用し、シャシーやエンジンにファインチューンが施されており、速度リミッターは解除されていた。成瀬氏の考えで前後を繋ぐシャシーが可能なかぎり真っすぐでなくてはいけないと、そのようにシャシーチューンが施されていたように記憶している。
特に袋井の高速ターンでのハンドリングはすこぶるよかった。そして士別での圧雪ワインディング路ではスタッドレスタイヤで常にドリフト状態でコーナーを曲がる。筆者はサイドブレーキなど使わずフットブレーキと慣性でリアを流すドライビングスタイルなのだが、70も80も(確か両方に乗ったと記憶している)自在に曲げることができ、そのハンドリングに感動した。
軽量かつローパワーのスポーツカーは日本にも存在するが、80スープラはミドルクラスのパワーマシンとして唯一ドライビングを学べるスポーツカーだったと考える。
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