初代エスクードなどなど、かつての国産車のヘッドレストは穴あきタイプの採用例が結構あった。今やシート一体型となったり、後部にモニターが付くなどで穴あきタイプは全くと言っていいほど見なくなってしまった。そもそもアレの存在意義は? そして何で廃れた!?
文:小鮒康一/写真:ベストカーWeb編集部/アイキャッチ:Ljupco Smokovski@Adobestock
■頭を休めるモノじゃない!? 安全に寄与する重要なパーツだった
現在のクルマのシートには必ず備わっているヘッドレスト。レストとは休む、休憩するという意味があるため、ヘッドレストを休憩中などに頭を預けて一休みするためのものと思っている人もいるかもしれない。
もちろんそのような使い方をしてもかまわないのだが、ヘッドレストの正式名称は「head restraint」であり、休憩のレストではなく、拘束を意味するレストレイントが正しくなる。
そんなヘッドレスト本来の役目としては、万が一後ろから追突されたときなどに頭が必要以上に動いてしまい、むち打ち症となってしまうことを防ぐ。いわば支えの役割で、頭が動きすぎないように拘束する役割を持っているのだ。
そんないざという時、我々を守ってくれるヘッドレストは1969年4月1日以降に生産されたクルマには運転席への設置が義務付けられている。
現在はヘッドレストのないシートを使用するのは違反となってしまうのだ。
■穴は会話のため!? 車内が窮屈にならない工夫だった
万が一のときのために我々を守ってくれるヘッドレストだが、1998年代後半から90年代にかけてヘッドレスト中央部がくりぬかれた「穴あきヘッドレスト」なるものが多くの車種に採用されるようになる。
この穴あきヘッドレストは車種を問わず、軽自動車からセダン、ワンボックスカーにRV車までさまざまな車種に採用されていたため、幼少期に穴あきヘッドレスト車に乗った記憶がある人もいるのではないだろうか。
ではなぜ穴あきヘッドレストが流行したのかという話だが、これはRVブームなどによって大人数でクルマに乗り、レジャーに向かうケースが増えてきたことが関係していると言えるだろう。
多人数乗車となれば当然ながら前席だけでなく後部座席に人が乗る機会が増えてくる。
そのとき、フロントシートに立派なヘッドレストが備わっていると前方視界が遮られ、窮屈な印象を受けかねない。
そこでヘッドレストの中央をくり抜くことで前方視界を少しでも稼ぎ、狭苦しい雰囲気を打破しようとしたというワケなのだ。
もちろん前席にも人が乗ればヘッドレストの穴も大部分は塞がれてしまうが、少しでも隙間ができることで解放感をプラスすることができるというアイデアから生まれたものとなっていたのである。
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