■逆に問題ないケースとは?
それは年間走行距離が非常に多く、古くなる前にタイヤを交換していく場合です。摩耗したタイヤから履き替えても結局そこまで新旧の差がないので問題になりません。毎日、長距離の通勤をされる方や、営業車やレンタカーなどもこれに当てはまります。
しかし、その際は「可能なかぎり同じ銘柄のタイヤを選ぶ。すでに売られてない場合はできるだけ近しいタイヤを選ぶ」ということを心がけてください。4輪でバラバラ銘柄のタイヤだと、結局4輪のグリップが異なり、不安定になってしまいます。
一度レンタカーで、4輪すべて別銘柄のタイヤを履いた個体に当たったことがあります。摩耗した場所から変えて、さらにはパンクしたりなどでその都度安いタイヤを履いた結果、そうなったのでしょう……できれば銘柄は揃えて欲しいところです。
以降は副次的なメリットになりますが、ふたつ目は「タイヤのトラブルに早期に気づける」こと。
タイヤのローテーションをすると、必然的にタイヤを外して内側も見ることができます。外から見ただけではわからなかった内側の偏摩耗や異常摩耗、ピンチカット(サイド部の損傷や膨らみなどの異常)などを発見することができ、走行中の大事故を未然に防ぐことができます。外側から見るだけでは大丈夫でも案外内側はそうでないケースもあるのです。
3つ目は「サスペンションの不調=アライメントの狂いに気づける」こと。タイヤに偏摩耗や異常摩耗があるということはアライメントが狂っていることが多いのです。使用に伴う経時変化、強い段差乗り越えによる衝撃、ブッシュの劣化などアライメントが変化する要因はいろいろ。
それを放置すると、これも高速走行時に不安定になったり、タイヤノイズが大きくなったり、何よりタイヤが無駄に早期摩耗してしまいます。アライメントを正しく修正することでクルマがより元気に快適に安全に走ることができるのです。
■特にタイヤローテーションが必要になる車両とは?
基本的にタイヤは、「走る」「止まる」「曲がる」の力がかかり、かつ大きな重量を支えるほど摩耗しやすくなります。
現代の一般的な乗用車は大半が前輪駆動車(FF)になりますが、フロントタイヤが「走る・曲がる・止まる・支える」の大部分を支えており、「ほぼ付いているだけ」なリアタイヤよりも圧倒的に摩耗が早いのです。なので、前輪駆動車(FF)は特にローテーションが必要になります。
次に後輪駆動車(FR/MR)。曲がる止まる支えるはフロントタイヤもある程度受け持ちますが、「走る」をずっと負担し、エンジンブレーキによる「日常的な軽く止まる」も受け持つことで後輪の摩耗が早くなります。
4輪駆動はその方式によりさまざま。例えば、常に4輪が繋がっているフルタイム4WDは比較的4輪が綺麗に摩耗しますが、生活4WDとも呼ばれる小出力のモーターで簡易的に4駆になっている場合やパートタイム4駆は、主となる駆動輪から摩耗していくことになります。
■スポーツ系のモデルやミニバンは要注意!
駆動方式以外でいうと、スポーツタイプの車両。
高い運動性を実現するためにネガティブキャンバーやトーインが強めに付いていることが多く、偏摩耗がしやすくなります。特に外からは見えない内側が摩耗することが多いため、よくよく確認しローテーションする必要があります。
日本を代表するかつての某スポーツカーも、無理のあるディメンション×タイヤサイズ設定をカバーするために前は超トーアウト、その後ろは超トーインで恐ろしいほど早くタイヤが摩耗する、なんてこともありました。
「ああ、クルマでなんとかできなかった部分を最後はアライメントで強引に辻褄合わせたんだな」なんて開発の裏事情が透けて見えちゃったりして(苦笑)。
あとは重く重心高も高いミニバンも偏摩耗しがち。
リアの安定性を確保するためにリアタイヤのネガティブキャンバーやトーインが強めになっている車両もありました。また、重心高が高いとロールが多いことから、ショルダー部が強く摩耗することも。そんな時もローテーションが有効になります。
さらにトリビアレベルですが、一部の外車では左側が摩耗しやすいので左右か、クロスローテーションが必要になることも。
もともと右側通行に合わせて開発されたタイヤはその右下がりの路面カントに合わせて作られています。左側通行で左下りカントの日本では「まっすぐ走っているのに左に流れてしまう」ため、常にハンドルを右に切った状態で保持する必要があります。
もしくは、見た目上ハンドル真っすぐで走れるようにアライメントをあえてアンバランスな「右に流れる」状態に設定したりも。
いずれにせよ「常に右に曲がるよう力がかかっている」状態になるので、結果的に左右でアンバランスな摩耗になってしまうのです。
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