マニアもうなるアウトランダーPHEVの走り!! ランエボ開発によって進化した究極の4WD技術の結晶だ!! 

■ランエボVIIで前後トルク配分も電子制御化された

さらに高度な制御が可能となったランサーエボリューションVII
さらに高度な制御が可能となったランサーエボリューションVII

 エボVIIになるとAYCに加えセンターデフの前後トルク配分(正確には差動制限量)を電子制御で細かく制御するACD(アクティブ・センター・デフ)が導入される。ACDはトランスファとセンターデフの間に設けた多板クラッチを油圧ポンプによって締結割合をコントロールするというメカニズム。加えてAYCと統合制御することで安定性と旋回性をより高いレベルまで押し上げた。

 ランエボIV、V、VIでは、うんと大雑把に言うと、リヤに駆動配分されるパワー(駆動トルク)をAYCで左右に分配することで曲がる性能をアシストしてくれるイメージ。

 これがエボVIIになると、前後のタイヤにバランスよくトルクが分配されるようになった。さらにボVIIIでAYCがスーパーAYCとなって、より伝達可能トルクが大きくなった。

 これによって姿勢制御が容易になり、安定性と曲がりやすさがアップしてドライバーの意図を組んでくれるようになった。クルマが自在に走ってくれる感覚も増している。

 もうちょっと詳しく説明すると、走行シーンに応じてセンターデフの締結をきつくして、安定性やトラクションを高めたり、緩めることによって軽快な旋回性を作り出したりするACDの働きと、AYCによってヨーの発生をアシストしたり逆に抑えたりすることで、走行シーンによってバランスよく前後+後輪左右のタイヤに駆動トルクが分配されるといったイメージだ。

 ACD+AYCによって、アナログな4WDコントロールでは引き出しきれないタイヤの性能を発揮しているという感覚がより強くなった。

 そして2007年に登場したエボXで三菱はAWC(オール・ホイール)をS-AWC(スーパー・オール・ホイール・コントロール)に進化させる。このシステムはAYCにABS(ブレーキ)とASC(横滑り防止装置)を統合制御したもの。

 従来であれば、ASCはアンダーステア/オーバーステアを抑えるために自動的にブレーキをかけ減速するよう作動するが、S-AWCではその手前で旋回をアシストするための(≒速く走るための)ブレーキ制御が行われているのだ。

 ランエボXの登場でメカニカルに作動するS-AWCシステムは一応の完成を見る。

■新技術で進化したアウトランダーPHEVの4WD

さらに4WD制御が進んだ現行型のアウトランダーPHEV
さらに4WD制御が進んだ現行型のアウトランダーPHEV

 その後、S-AWCは複雑なメカニズムを使わない形でも進化を見せることになる。それが2012年に登場した2代目アウトランダー/アウトランダーPHEV(初登場)への搭載だ。

 ガソリンモデルは、電子制御カップリングを用いたシンプルな4WDシステムだが、電子制御カップリングの断続による前後駆動配分とブレーキを使ったヨーコントロールを行うことで、4輪の駆動力制御を行うというもの。

 一見すると、普通のオンデマンド4WDの前後駆動制御と変わらないように思えるかもしれないが、重要なのは様々なセンサーがクルマの動きを読み取ってシームレスに適切な駆動力を配分するロジック。

 それがもっと顕著に現れているのがツインモーターのS-AWCだ。聞くところによると、アウトランダーPHEVの開発に当たって、4輪の駆動力を自由にコントロールできるので、思い通りの操縦性を作り出せると考えていた。

 ところが、いざ後輪モーター駆動の4WDを走らせてみるとまったく安定性がなく、思い通りに走らなかったのだという。リヤモーター4WDに取り組んだことで、改めてメカニカルに前輪と後輪がつながった4WDの良さがあることに気付いたという。

 その結果S-AWCのドライブモードにはエコ、ノーマル、スポーツ、ロック、スノーを設定した。あえてロックモードを謳ったのは、前後輪の回転が、あたかもプロペラシャフトでつながっているかのように制御させていることへの自信の表れでもある。

 3代目となる現行型アウトランダーPHEVは、前後のモーター出力をアップするとともに、これまで左右のトルク配分を前輪(のブレーキ制御)のみで行っていたものを後輪のトルク配分(ブレーキ制御)も加えAYCの性能を高めている。

 ちなみに前後輪にブレーキAYC制御を盛り込んだのは、同じヨーを作り出すのに後輪も加えたほうが1輪に加える力を小さくできるから。4つのタイヤをいかに効率よく使って曲がる性能と安定性を高いレベルで両立させるかという三菱の4WDに対する考え方がうかがえる。

 三菱がWRCから撤退したとき、これで三菱の4WDの進化は止まってしまうのではないかと思われた。ところが現在、ハイブリッドやPHEVの普及でリヤモーター駆動が容易になったことで、後輪モーター駆動に注目が集まるようになっている。

 各メーカー操縦安定性の難しさに直面しているように見えが、三菱がリヤモーター駆動の難しさを比較的楽々(と見える)クリアして見せたのは、ここまでオールホイールコントロールという考え方を4WD制御のコアに据えて開発を続けてきたからだろう。

 それは間違いなくランサーエボリューションが進化させた4WDのオールホイールコントロールという考え方や制御技術が現代の三菱車に引き継がれているということに違いない。

【画像ギャラリー】ランエボ各モデルの進化とアウトランダーPHEV(22枚)画像ギャラリー

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