夢見たアンダー200万FRスポーツは幻に……トヨタS-FRが市販されなかった理由ってなんなのよ

夢見たアンダー200万FRスポーツは幻に……トヨタS-FRが市販されなかった理由ってなんなのよ

 モーターショーに出展されたコンセプトカーのなかには市販化を熱望されながらも、その後まったく話を聞かなくなったというものも少なくない。そんな印象が特に強かった2015年の東京モーターショーのトヨタS-FRが市販化されなかった理由や今後の市販化の可能性を考えてみた。

文/永田恵一、写真/ベストカー編集部、トヨタ

■S-FRとはどんなコンセプトモデルだったのか?

2015年の東京モーターショーで公開されたFRスポーツのコンセプトモデル、トヨタS-FR。このまま市販できそうなほど完成度は高かったのだが……
2015年の東京モーターショーで公開されたFRスポーツのコンセプトモデル、トヨタS-FR。このまま市販できそうなほど完成度は高かったのだが……

 S-FRのコンセプトはズバリ、トヨタのラインナップにおけるエントリーカーとなる、狭いながらもリアシートを持つコンパクトなFRのライトウェイトスポーツクーペである。

 当時のトヨタは「大中小のスポーツカーをラインナップしたい」という意向をコメントしていたこともあり、筆者は「中がすでに市販化されていた初代86、大がこの時点で開発が噂されていたスープラ、小がS-FRなのか!」と心躍った記憶がある。

 S-FRは搭載されるエンジンこそ発表されなかったものの(コンセプトカーは1.5Lの4気筒NAあたりを積んでいたのだろうか?)、車重900kg台前半を目指していたと想像される画期的な軽量化、エンジンの搭載位置はフロントミドシップ、リアはダブルウィッシュボーンと思われるサスペンション形式など、小さいながら中身は本格的であった。

■かつてのヨタハチを彷彿とさせる外装デザイン!

S-FRのエクステリアはヨタハチなどかつてのトヨタライトウェイトスポーツの系譜が受け継がれている
S-FRのエクステリアはヨタハチなどかつてのトヨタライトウェイトスポーツの系譜が受け継がれている

 また、俗にヨタハチと呼ばれているかつての「トヨタスポーツ800」を思い出させるファニーなエクステリアに呼応するように、ポップに仕上げられたインテリア(液晶メーターは現行GR86&BRZに通じる感も)にはディスプレイの類を配置するスペースすらなかった。

S-FRのインテリア。外装だけでなく、内装面もこのまま市販してもおかしくないほどの高い完成度を持っていた
S-FRのインテリア。外装だけでなく、内装面もこのまま市販してもおかしくないほどの高い完成度を持っていた

 これは現在そうなりつつあるように、ナビやオーディオの機能はスマホに任せるという示唆や割り切りだったのかもしれない。

 さらにS-FRは初代86のコンセプトカーがそうだったように、翌2016年の東京オートサロンにはS-FRをサーキット仕様とした「レーシングコンセプト」も出展された。

2016年の東京オートサロンで公開されたS-FRレーシングコンセプト。こちらも驚きの完成度で登場し、クルマ好きの来場者を大いに驚愕させた
2016年の東京オートサロンで公開されたS-FRレーシングコンセプト。こちらも驚きの完成度で登場し、クルマ好きの来場者を大いに驚愕させた

「レーシングコンセプト」はエンジンのターボ化、エアロパーツの装着、50mmの車高ダウン、40mmの拡幅に加え、ブレーキも強化。S-FRはベースとなるコンセプトカーの完成度が非常に高かったこともあり、「こんなに話が進んでいるのか!」と感じざるを得なかった。

 それだけにS-FRの市販化への期待が高まるのは当然で、「総額200万円くらいで市販化されれば、かつてのAE86レビン/トレノやFR時代のスターレットのように若者も楽しめる!」と感じたクルマ好きは多かったに違いない。しかし、S-FRは冒頭に書いたようにいまだ市販化されず、開発は凍結されたようだ。

次ページは : ■なぜS-FRは市販化されなかったのか?

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