安全基準で普及したリトラクタブルヘッドライトだが、消えた理由も安全基準
当時は「スポーツカーといえば、リトラクタブルヘッドライト」というほど流行しましたが、2000年を迎える頃にはすっかり廃れ、日本では2002年に生産を終了したマツダの3代目「RX-7」、世界では2005年に生産を終えたGMシボレーの「コルベットC5」が、リトラクタブルヘッドライトを採用した最後のモデルとなっています。
リトラクタブルヘッドライトが採用されなくなったもっとも大きな要因は、普及のきっかけでもあった北米の安全基準が緩和されたことです。1990年代に入ると、北米のヘッドライトに関する規格や高さの規制が緩和され、リトラクタブルヘッドライトを採用しなくても、ある程度シャープなフロントノーズが実現できるようになりました。そのほか、保安基準の突起物規制で、歩行者との衝突事故時に引っ掛けたり、大ケガを引き起こすボディの鋭い突起物がないことが定められたことで、リトラクタブルヘッドライトを採用することが難しくなったことも、衰退の原因になりました。
また、最近普及しているプロジェクターヘッドライトのようなヘッドライトの技術進化も、リトラクタブルヘッドライトが不要となった一因になりました。配光が自在にコントロールできるようになり、ヘッドライトのレンズをスラントさせたり、レンズ形状を自由に変更できるようになったことで、空力性能への影響を軽減できたのです。また、リトラクタブルヘッドライト装着によるコストアップや重量増加なども、大きな障壁でした。
復活のためのハードルは高いが、可能性に期待したい!!
現在、極少量で限定販売されているスーパーカーでは採用している例もあるリトラクタブルヘッドライトですが、前述したように、量産車では世界的にみても17年以上、採用したクルマはありません。ヘッドライトの技術も進んでいる現在、コストや重量面でハンディのあるリトラクタブルヘッドライトを選ぶ理由はなく、おそらく今後も出現する可能性は低いと思われます。
しかし、薄め目横長のLEDヘッドランプが多い昨今のクルマにおいて、ウィンクするように開く大きなリトラクタブルヘッドライトはむしろ新鮮。コストと重量のハンディは避けようがありませんが、安全性やオートライトなどとの相性をクリアすれば、多少割高になっても、デザイン性に特化したクルマやBEVのような先進的なクルマの装備として、再登場する価値はあるのではないか、とひそかに期待しています。
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