クルマのお手軽変身機能!!「リトラクタブルライト」はなぜ絶滅したのか?

クルマのお手軽変身機能!!「リトラクタブルライト」はなぜ絶滅したのか?

 1970年代後半に大旋風を巻き起こしたスーパーカーや、1980年代に若者を夢中にさせたスポーツカーやスペシャリティカーの多くが採用していた、リトラクタブル(格納式)ヘッドライト。空力性能に優れ、何よりもスマートでフロントノーズが精悍に見えますが、あれだけ流行ったのに、現在は量産車の採用例はありません。

 かつてはスポーティなクルマの象徴的な装備として流行った、リトラクタブルヘッドライトの辿った軌跡と廃れた理由について、ご紹介します。

文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
写真:HONDA、TOYOTA、MAZDA

国産車初の採用はトヨタ2000GT、普及の火付け役はサバンナRX-7

 「リトラクタブルヘッドライト」とは、普段はヘッドライトをボンネット前端部に格納し、点灯時にポップアップしたり、反転して突出するヘッドライトのこと。フロントノーズを低くシャープにデザインでき、空力性能も向上できることから、1970年代から1980年代にかけてスポーティなクルマの象徴的な装備として人気となっていました。

 米国では、すでに戦前に誕生していたリトラクタブルヘッドライトですが、国産車で初めて採用したのは、1967年に登場した「トヨタ2000GT」です。1970年代後半には、日本でスーパーカーブームが起こり、ランボルギーニ「カウンタック」やフェラーリ「365GT4BB」など多くのスーパーカーが採用していたことから、リトラクタブルヘッドライトが注目を浴びますが、国内での流行の火付け役となったのは、1978年に登場したマツダの「サバンナRX-7」です。

 以降、トヨタ「スプリンタートレノ(AE86)」、トヨタ「セリカXX(2代目)」、三菱「スタリオン」、日産自動車「シルビア(2代目)」、ホンダ「プレリュード(2&3代目)」、マツダ「ユーノス(NA型)ロードスター」などが採用したことで、スポーツカーや当時ブームになっていたスペシャリティカーの定番装備となり、ホンダ「アコード(3代目)」やトヨタ「ターセル/コルサ(3代目)」といった大衆車まで、採用は拡がりました。

 実は、リトラクタブルヘッドライト普及の背景には、見た目のかっこよさだけでなく、北米の安全基準に適合するためという理由もありました。当時のヘッドライトに要求された安全基準の地上高を満たすことと、低いノーズのスタイリッシュなデザインを両立させる手段が、リトラクタブルヘッドライトであり、世界最大の北米市場に輸出するためには、必須装備だったのです。

国産車として始めてリトラクタブル(ポップアップ式)ヘッドライトを装備したトヨタ2000GT。低いノーズを実現するために採用され、グリル横の大きなフォグランプの後方にヘッドライトが格納されている
国産車として始めてリトラクタブル(ポップアップ式)ヘッドライトを装備したトヨタ2000GT。低いノーズを実現するために採用され、グリル横の大きなフォグランプの後方にヘッドライトが格納されている
1978年に登場したサバンナRX-7。洗練したスタイリングとロータリーエンジンの力強い走りで若者を魅了
1978年に登場したサバンナRX-7。洗練したスタイリングとロータリーエンジンの力強い走りで若者を魅了

次ページは : 安全基準で普及したリトラクタブルヘッドライトだが、消えた理由も安全基準

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