フロントマスクは文字通り「車の顔」。多くの車のフロントマスクには、そのメーカー・ブランドを表わす共通のエンブレムが付いている。
ホンダ車はHマークを、スバル車は六連星エンブレムといった具合に、すべての車種にメーカー共通のエンブレムを採用しているメーカーもある。
一方で、例えばクラウンのフロントマスクにはトヨタのメーカーロゴではなく、王冠をかたどったエンブレムが付く。これは同車専用のエンブレムだ。
このように車種独自の専用エンブレムを採用するモデルは、実は近年減少傾向にある。そのなかで、なぜクラウンやGT-Rなどは、わざわざエンブレムを差別化しているのか?
車やメーカーの象徴でもあるエンブレムに込められた意味を追った。
文:永田恵一
写真:編集部
現在車種別エンブレムを採用するモデルは?
現行の日本車で車種別エンブレムを採用する車種は以下の通りとなる。
トヨタの場合フロントマスクに車種別エンブレムが付くモデルは日本専用車、伝統あるモデルに付くことが多い傾向を感じる。
また、ダイハツは、ムーヴやタントのような主力車種にはダイハツのエンブレムを採用。
ミラトコットやウェイクといった派生車種や旧型がない新型車に車種専用エンブレムを採用する傾向があり、車種専用のエンブレムがフロントマスクに付くモデルが意外に多い。
現行の日本車全体で見れば、フロントマスクに付くエンブレムは、やはりメーカーかブランドのモノが付くモデルが多数派で、車種別エンブレムが付くモデルは少数派といえる。
■主な車種別エンブレム採用車の一覧
【トヨタ】
カローラアクシオ、カローラフィールダー、カローラフィールダー、アルファード、エスティマ、エスクァイア、ノア、アリオン、プレミオ、マークX、クラウン、センチュリー、ハリアー
【日産】
GT-R
【スズキ】
ラパン
【ダイハツ】
コペン、ミライース、ミラトコット、キャスト、ムーヴキャンバス、ウェイク、ブーンスタイル
車種別エンブレムは減っている?
さて、平成以降の過去30年間で「昔は付いていたものの、現在はフロントマスクに車種別エンブレムを付けなくなった車」(車種自体が消滅したものも含む)は以下の通り。
日本車全体で見ればホンダ、マツダ、三菱、スズキでフロントマスクに車種別エンブレムが付いていたモデルは、少なくとも筆者の記憶にはない。
ここに日産車の減少分と、トヨタと日産の車種数減少によるマイナス分、ダイハツのプラス分を差し引きすると、「フロントマスクに車種別エンブレムが付くモデルは若干減少傾向」というのが総合的に見た現状だろう。
■車種専用エンブレムが消滅したモデル一覧(絶版車含む)
【トヨタ】
ヴィッツ、ヴォクシー(現在この2台にはネッツ店のエンブレムが付く)、カムリ(5代目モデルまで)など
【日産】
キューブ、エルグランド、ステージア(ともに初代モデルまで)、スカイライン(10代目モデルまで)、フェアレディZ(4代目モデルまで ※左右フェンダーには現在も専用エンブレムが付く)、シルビア、プレジデント、シーマ(4代目モデルまで)、セドリック/グロリア
【三菱自動車】
初代プラウディア/ディグニティ
【スバル】
レガシィ(2代目と3代目モデルの途中まで)、インプレッサ(初代モデルの途中まで、2代目モデルのごく初期)
■なぜ日産で車種別エンブレムが付くのはGT-Rのみに?
このように日産では目下、GT-Rのみが車種専用エンブレムを採用している。
これは1999年にゴーン体制となって以来、日産はルノーとの資本提携も含め「日本の企業というよりグローバルな企業」になったこともあり、新生日産のアピールも含めて、それぞれの車種よりも日産のブランドを強調する方が重要と判断しているためだろう。
GT-Rにだけフロントマスクに車種別エンブレムが付く理由は、日産のシンボル的なモデルであることに加え、それまでなかったマルチパフォーマンススーパーカーというジャンルのモデルだけに、世界にGT-Rというブランドをアピールするべきと判断した結果だろう。
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