日本の物流の大動脈である「東名高速道路」、それ故に問題となっているのが渋滞だ。コロナ化で多少はマシになったのは良いが、アフターコロナの影響でまた元の状態に逆戻りしている。そこで対策として付加車線設置をしたが逆効果……一体いつになったら改善されるのだろうか?
※本稿は2024年5月のものです
文:清水草一/写真:清水草一、NEXCO中日本
初出:『ベストカー』2024年6月10日号
■付加車線設置による渋滞対策は残念な結果に
全国で高速道路ネットワークが充実し、恒常的な渋滞が徐々に減少するなか、神奈川県内の東名高速道路ではコロナ明け後、渋滞の悪化が著しい。
その背景には、圏央道沿道への巨大物流拠点の集中や、首都高・横浜環状北西線の開通によって、東名への流入交通量が増加したという外部要因があるが、付加車線の設置による渋滞緩和策が機能していないのも事実だ。
2024年3月、国交省が主催する「神奈川県渋滞ボトルネック検討ワーキンググループ」の第6回会合が開かれたが、その内容を知り、「彼らはこの8年間、いったい何をやっていたんだ!」と呆れるしかなかった。
東名関連の渋滞ワーキンググループでは、2015年末に大和トンネルの前後に付加車線を設置することを決定し、6年後の2021年に一部が完成して運用を始めている。
大和トンネル前後に掲示されていた「大和トンネル拡がります」や、拡幅後の「大和トンネルひろがりました」の横断幕を見たことのあるドライバーは、少なくないだろう。
■道路拡幅も虚しく効果はわずか
しかし、効果はほんのわずかだった。下り線に関しては効果ゼロ。
これは、下り線のサグ部の付加車線が未完成なので仕方ないが、サグ部が拡幅された上り線でも、渋滞の先頭が大和トンネルから綾瀬スマートインター付近に移動しただけで、渋滞量はほとんど減っていないし、むしろ平日は交通量の増加によって悪化している。
上り線は、綾瀬スマートインター付近で4車線から3車線に減り、その1.3km先で再び4車線になる。なぜ途中に3車線区間を残したのか、当初から不可解だった。
私は2015年に、現在の付加車線設置方針が発表された段階から、「これでは必ず渋滞が残る」とメディアに書いてきた。上下線とも、大和トンネル付近を部分的に拡幅するだけでは、結局車線数が減る地点を先頭に渋滞が発生するのは、火を見るよりも明らかだった。
しかしそれでも、どこか国交省等の専門家を信頼する部分もあった。彼らはコンピュータ・シミュレーションを行った末、この対策を決めたはずだ。シミュレーションでは、これで充分な効果が出るという結論になったのだろう。なので、多少なりとも渋滞は緩和されるはずだ……と。
しかしフタを開けたら、渋滞の先頭位置が変わっただけで、ほとんど効果がなかったのである。
拡幅の形状を見て、「これって渋滞残るよね」と直感した筆者の経験則のほうが正しかったのだから情けない。関係者には、猛省を促したい。
今回の会合では、それに対する新たな渋滞対策案が示された。現在ボトルネックとなっている上り線の3車線区間1.3km(綾瀬スマートインター付近~大和トンネル手前)にも付加車線を設置して4車線区間が連続するように改良するというものだ。
あの中途半端な付加車線の設置計画から8年。「やっぱり足りなかったので追加します」というわけだ。これで専門家と言えるのだろうか? 現在の計画では下り線に関しても横浜町田インター~大和トンネル手前間が中途半端に3車線のまま残る計画だがこちらも完成後にやっぱり足りませんでしたとなるに違いない。
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