■スポーティグレードで選ぶベスト「後ろ足」はこのクルマ!!
【松田秀士選 ランドローバーヴェラ—ル】
最近リアサスが優れていると感じたのは、ランドローバー ヴェラールだった。なかでもボクが特に優れていると感じたのは、上位モデルとなるエアサスを装備したモデル。
エアサスを採用するのは、用途に応じて車高が変えられるからだ。サスペンションを上下させて車高を変化させると、それによって前後サスペンションのロールセンターを結んだロール軸も変化する。ロール軸の上に車体の重心があり、この関係はテコの原理で動いている。
車高を下げると、ロール軸と重心が離れモーメントが大きくなる。これはスプリングを柔らかくしたのと同じになる。車高を上げるとこの逆だ。
ヴェラールは、105km/hを超えると標準車高から自動的に10mm下がる。また、50km/hまでのオフロード走行時には46㎜も車高が上がる。
これほどの上下車高の差を持ちながら、どのようなモードでもリアサスがよく動き、ハンドリングがすばらしいのだ。
フロントもよく動くが、コーナリング中どんなに路面が荒れていても前後のサスペンションが吸収し、しっかりとタイヤが路面を掴んでいた。
さらに、超高速直進性もピタリと路面に張り付いてバツグン。やはり、コストをかけたサスペンションを奢ったクルマはすばらしい。
【斎藤聡選 VWゴルフ7】
ゴルフ7がいい。特に6月マイナーチェンジを受け、全モデル、リアサスが4リンク式(独立式)になって、リアサスの重要さが際立った。
このリアサスのよさは、応答性がすこぶるいいことだ。ハンドルを切り出した直後にリアサスが仕事を始めている。リアサスの応答に遅れが出ると、ノーズだけがグイッと動くようなしぐさを見せる。
ところがリアサスの応答が速いと、リアサスにも曲がろうとする力(ヨー)が発生するので、フロントの動きに追従して、クルマの動き自体はマイルドになる。
ゴルフ7でカーブを曲がろうとハンドルを切り出すと、鋭さはないのにスーッと思いどおりに向きが変わるのは、リアサスの応答のよさからきているのだ。ではなぜ、同じサスペンション形式のゴルフ6と、操縦性の面で大きな違いがあるのか?
違うのはプラットフォームだ。MQBと呼ばれる、とてもお金のかかったプラットフォームを開発したことが、理由のひとつに挙げられる。ボディワークもレーザー溶接を積極的に使い、応答性のいいボディを作っていることが大きな要因と言っていいだろう。
結局のところリアサスのよさは、リアサスを積極的に使おうとする考え方を元に、ボディやシャシーまで手を加え、積極的にリアサスに仕事をさせるようチューニングして初めて効果が得られるものなのだろう。
当然リアサスもトーションビームではなく、マルチリンクタイプ(ゴルフの4リンクもマルチリンク式)の独立式がいいということが言えるのではないかと思う。
【桂伸一選 スイフトスポーツ】
「うーん凄い!!」と唸ったのは1980年代後半、メルセデス・ベンツ190Eのマルチリンク式リアサスだった。当時のタイヤのグリップレベル(低い)も大きく関係するが、コーナーでビヨーンと伸びるイン側。
沈むアウト側リアタイヤが路面を掴み駆動力を伝え、姿勢を整え、乗り味を滑らかにする。いっぽう、FFモデルではいまだにVWゴルフのトーションビームの、”あの”イン側を浮かせて3輪になりながらも決して流れない安定性を凌ぐビームサスはないかも!?
しかし、時代は変わった。直近の国産ではトヨタの新たなプラットフォーム「TNGA」で作られた4代目プリウスやC-HRに乗って驚いた。
リアサスをビームからダブルウィシュボーンにしたことも大変革で、前後サスがバランスよくスムーズにストロークしながら衝撃を吸収~減衰させると、クルマの走り、動き、乗り味はこんなにも自然で滑らかになる、と言う意味で。
それがダブルウィシュボーンの恩恵だと言えば、そうとも言えるし、違うとも言える。
プリウスは前3世代まで、リアサスはビームであり、3世代目後期型はかなり滑らかになったとはいえ、やはり角の硬さ、尖りは確実にあった。ホンダはシビックでマルチリンク化してTNGAに並ぶ。じゃあ、ビームでいいものはないのか? ……ある!!
「アクアGRスポーツ」と、締め切り直前に乗った新型「スイフト・スポーツ」はゴルフとは違うが日本も〝やればできた〟と感じることができた。各形式のベストカーはこのような感じだ。
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