■クルマの作りこみは、さすが「VW」
全長4115×全幅1760×全高1580mm、ホイールベース2550mmのコンパクトなボディサイズは、ヤリスクロス(4180×1765×1560、WB2560mm)とほぼ同じ。
だがT-Crossの方がボクシーなスタイリングのため、ヤリスクロスよりも車室内の広さは勝っているように感じる。スクエアなウィンドウも、前後席からの見晴らしがよく感じる理由だ。最小回転半径も、5.1mとコンパクトSUVの中でも小さく、これも嬉しいポイントのひとつだ(※ヤリスクロスは5.3m)。
試乗したのはTSI 1st Plus。18インチを履いた上級モデルのほうだ。ドアを開けた瞬間から「つくりの良さ」を感じる。近年は、国産車も、このドアを開閉した際の音に重厚感が増してきてはいるが、T-Crossのそれは、やはりドイツ車らしい「クルマのつくりの良さ」を感じさせるものだった。
ファブリックシートは、サイドサポートが小さめに見えるものの、身体を沈み込ませて支える形状となっているため、ちょっと頑張った走りをしても体がずれる心配はない。ステアリングもチルト&テレスコピック調節ももちろんでき、ドラポジ調節も問題ない。
久しぶりに見た手引きのサイドブレーキも、ドリンクホルダーとレイアウトでケンカにならなければ、このタイプであっても問題はないと筆者は考える。
ただし、ACCの停車時のホールド時間が短くなるのはいただけない(詳しくは後述する)。ドイツでは、T-Crossに5速MTもしくは6速MTもあるので、部品共用化が、手引きサイドブレーキとなっている要因だろう。
メーターは、VWが推しているフル液晶デジタル式ではないものの、シンプルで見やすい表示だ。
しかし、ACC作動時の表示が小さく、視認しにくいのは小さな課題だろう。しかし、ステアリングホイールやシフトノブ、ハード樹脂を多用したインパネやダッシュボード、センターコンソールなどの「質実剛健なつくり」は、ちょっと前のVW車に近い、頼もしさを感じさせるものだった。
■中低速以上にマッチした足回り
軽自動車の排気量に毛の生えた程度である、1.0リットル(正確には999cc)という排気量で、どうしてこれほど力強い加速や巡行走行ができるのだろうかと、本当に驚かされる。
DSGの低速発進時の動作を気にする方も多いが、少なくともこのT-Crossに関しては、違和感などは全くなく、ごく自然な動作だ。回転数をさほど上げずに、「クン!! クン!! 」とシフトアップをしていくので、イメージ通りの加速に乗せやすい。
一般道やワインディングでの身のこなしは、ボディサイズに対してオーバースペックにも思える18インチタイヤ(ピレリCinturate P7)と、1270kgという、やや軽めの車重の恩恵もあり、グイグイと旋回をするイメージだ。
路面に張り付いたような動き、とまではいかないが、試乗当日は激しめの降雨になる時間もあったものの、一般道を流す程度では、タイヤのグリップ不足を感じたり、滑るそぶりを感じることは全くなかった。
乗り心地は、ボディの上下動をしっかりと抑制し、フラットに保つようなセッティングだ。そのため、中低速で走るワインディングや高速巡行は得意だ。欧州の郊外路を快走するイメージが似合う。
半面、段差乗り越し時の突き上げは大きめだ。「ドタン!」といったインパクトノイズと鋭いショックは、後席の方がよりきつい。原因は45扁平のタイヤにあるのは間違いない。
デザインを楽しむコンセプトのために18インチを採用したのだろうが、T-Crossには17インチが限界だと思われる。17インチで、カッコよいホイールデザインを望みたいところだ。
T-Crossは、高速走行が「大の得意」だ。車自体が持つ直進性が非常に高く、ステアリングも支える力もわずかで済むので、「この上ないほどに極上」の高速クルージングができる。ロードノイズも比較的小さく、安っぽい音や嫌味な音は一切ない。
1.0リッターの排気量と、全長4.1メートル程度のコンパクトSUVだということを忘れるほどに、安心感の高い巡行走行ができる。
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