タイヤのサイズ17か19インチが選べるけどどっちがいい?

タイヤのサイズ17か19インチが選べるけどどっちがいい?

 クルマを購入する際、一番悩むのがオプション選び。「あれもこれも欲しいけど、全部つけると高くなるし…」と悩むのもまた楽しいものですが、なかでも悩ましいのがタイヤのサイズです。

 「標準タイヤは17インチだけど、オプションで19インチも選べる…」となると、よりカッコよくなる19インチを選びたくなりますが、インチアップによって起きる「デメリット」が気になるところ。

 本記事では、17インチではなく、19インチを選んだことによる跳ね返りはどのくらいのものなのか、解説していきます。これを読むと、19インチを選べなくなるかも!?

文:吉川賢一
写真:NISSAN、ベストカー編集部、撮影/池之平昌信

【画像ギャラリー】スカイラインの歴代モデルをギャラリーでチェック!!


インチアップのメリットはデザインのみ!!

 前提条件として、タイヤサイズ違いでもタイヤのゴムのコンパウンド(混合)や内部構造(ランフラット有無など)は変わらないものとします。

 今回は例として、日産スカイラインを取り上げます。スカイラインのベースグレード(V6 TURBO GT)のタイヤは、225/55RF17(タイヤ外径:679mm)。メーカーオプションで、245/40RF19(679mm)を選択することができます。今回は、このサイズ違いにどのようなメリット・デメリットがあるのか検討してみましょう。

写真は2017年モデルのV37型スカイライン200GT-t 17インチ(225/55RF17)を装着する標準グレードだ
写真は2017年モデルのV37型スカイライン200GT-t 17インチ(225/55RF17)を装着する標準グレードだ
写真は2019年モデルのV37型スカイラインGT type SP、19インチ(245/40RF19)を装着する上級グレードだ
写真は2019年モデルのV37型スカイラインGT type SP、19インチ(245/40RF19)を装着する上級グレードだ

 メーカー純正タイヤとの車速誤差を最小限にするため、タイヤ外径を維持することは必須です。その条件でインチアップ(低扁平化)をすれば、タイヤ高(接地面からホイールまでの高さ)が減り、タイヤの特性は明確に変わります。

 経験上、タイヤ縦バネのおおよその変化代は1インチアップでプラス10~15%程度。先述した17インチタイヤ(225/55R17)のタイヤ縦ばね定数を250N/mmとすると、2インチアップでおよそ330N/mm、路面ショックは明確に強くなります(さらに、40扁平を下回ると縦バネの増加率は急激に上がる)。

 車両重量1500kg程の乗用車ならば、コイルスプリングによるバネ常数は、通常200~300Nkgf/mm(ホイール端)。そのため、軽微な路面凹凸を吸収する、という、タイヤが本来担っていた仕事を一つできなくなり、サスペンションの受け持つ役割が一つ増えてしまいます。

 また、低扁平化でタイヤのサイドウォールのよれが減り、タイヤの横剛性が増すことで、コーナリング時の初期のレスポンスは上がる傾向に変わります。また、タイヤ前後方向バネも上がるため、急制動や加速時にタイヤがよれる現象も減ります。経験上、こちらも1インチアップで10%程度。

 このタイヤ横剛性の向上を、「初期応答が良くてスポーティ」と表現する場合もありますが、路面のギャップによって、旋回途中の横方向のグリップの粘り(接地性)は下がる傾向ですので、平坦な道やサーキットのような環境でもない限り、走りのポテンシャルが上がるとは、一概には言えません。

低扁平化はスポーツ走行に適しているわけではない 旋回中に縁石やギャップを踏んだときに、姿勢を乱す要因となる可能性も
低扁平化はスポーツ走行に適しているわけではない 旋回中に縁石やギャップを踏んだときに、姿勢を乱す要因となる可能性も

 そして忘れてはならないのが、タイヤとホイールの重量増加です。17インチから19インチ化することで、タイヤの体積は減りますが、強度確保のためのカーカスやビード部の構造物は残りますので、さほど軽くはなりません。経験上だとマイナス0.5kg程度です。

 対して、ホイールのインチアップによる重量増加が著しく、1インチアップで約2kgアップ、19インチ化をすると一輪で4kgほどの重量増加となります。

 前提においた17インチのタイヤ・ホイールだと、タイヤ単体の質量は約10kg、ホイールは約12kg、19インチ化でタイヤ単体は約9.5kg、ホイールは約16kgにはなると考えられ、バネ下重量が単純に22kgから25.5kgと、おおよそ15%も増加することになります。

17インチから19インチ化することで、タイヤの体積は減るが、強度確保のためのカーカスやビード部の構造物は残りますので、さほど軽くはならない。経験上だとマイナス0.5kg程度だ
17インチから19インチ化することで、タイヤの体積は減るが、強度確保のためのカーカスやビード部の構造物は残りますので、さほど軽くはならない。経験上だとマイナス0.5kg程度だ

 バネ下の重量物が増加すると、少し荒れた路面を走った際、サスペンションが路面の凹凸を吸収しきれずに、車体側が揺らされる現象が起きます。乗り心地の用語でよく「バネ下のバタつき」と表現しますが、これを抑えるためには、ダンパーの減衰力を増やす必要があり、また一つ、サスペンションが担う役割が増えてしまいます。

 また、バネ下の質量と縦バネで決まる、バネ下共振周波数が変わることで、一般道を走行中に、ブルブルとした車体振動が生じることもあります。今回の17インチサイズだと、だいたい15~17Hz付近に共振周波数があります。

 物理法則上だと、バネが高い(もしくはバネ下が軽い)ほど共振周波数は上がり、バネが低い(もしくは質量が低い)ほど下がります。クルマには、エンジンやトランスミッション、サスペンションメンバー、排気管など、様々な構造物がゴムマウント(バネ要素)を介して搭載されており、それぞれに固有値(固有振動数)があります。

 この固有値同士が重なると、ある走行条件に至った際に、異常振動を生じてしまいます。

 自動車メーカーでは、これらの固有値同士がぶつからない様、固有値を分散させる振動設計を必ずしています。今回のように、選定するタイヤバリエーションがメーカー純正であれば、問題はありませんが、メーカーが想定した範囲を超える扁平率のタイヤをはくと、思わぬ異常現象が起きる可能性はあります。

 この辺りは、超低扁平のタイヤを装着する場合には、覚悟をしないとなりません。

17インチと19インチの比較をした事例の主な傾向を表にしています。タイヤの銘柄違いや、タイヤ内部構造(ランフラット等)によっては、これらの傾向は通用しないことがあります
17インチと19インチの比較をした事例の主な傾向を表にしています。タイヤの銘柄違いや、タイヤ内部構造(ランフラット等)によっては、これらの傾向は通用しないことがあります

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