ホンダといえばF1を筆頭とするモータースポーツ直系の硬派なスポーツカーを想像する人も多いかもしれない。現在もシビックタイプRは健在で(もう買えないけど……)、NSXもある。
でもいわゆる「普通のクルマ」も走りがいいのがホンダの伝統であり、その延長線上にタイプRなどが存在していたはずだ。その過去を知る人からすると「最近どうなのよ」という意見も聞こえてくる。
しかし、そんな「上質で走りのいいクルマ作り」を追い求めているのがModuloXの開発を担当するホンダアクセス。アドバイザーに土屋圭市氏を起用し、妥協なき走りを磨き上げている。
今回は「実効空力」とModuloX開発陣が呼ぶ空力効果と、2021年春の発売が見込まれるフィットModuloXコンセプトを体感する試乗会が開かれた。ModuloXは「ホンダ魂」の伝道師と呼ぶにふさわしいものだろうか。
担当個人的にはModulo開発陣の開発への熱量が凄すぎて、ホンダ本体を超えちゃったんじゃないのと思ったほど(それくらい凄い足でした)。
【画像ギャラリー】「俺らのホンダ」が戻ってきたぞ ホンダ魂後継車”FIT ModuloX”の全貌を見よ
文:鈴木直也/写真:奥隅圭之
■ModuloXの目指すべきところは公道での「上質スポーティ」
Modulo Xといえば、ホンダアクセスが展開するコンプリートカー。エアロパーツやサスペンションをモデファイした新車が、2013年のN-BOXを皮切りに現在まで5車種1.4万台も販売されている。
ホンダ直系の“ワークス”的存在だけに、目指すのは完成度の高さだ。サスペンションにしてもエアロパーツにしても、確かな機能性に基づいたデザインとセッティングが施されており、乗ればその違いがわかる体感性能を実現している。
今回、袖ヶ浦フォレストレースウェイで開催された試乗会は、その「体感性能」を乗り比べてみようというのがテーマ。ノーマルのフリード、そしてフロントバンパーのみノーマルのフリード Modulo X、そしてフリード Modulo Xのコンプリートモデル。
この3車を順に試乗することによって、サスペンションの違いと空力性能の差を「体感」してみようというわけだ。
というわけで、まずはノーマルのフリード(1.5ガソリンCVT)に乗ってみる。「ちょうどいいミニバン」というキャッチでおなじみのフリードは、誰にでも使いやすい3列シート7人乗りのファミリーカー。
本来はサーキット向きのクルマとは言い難いのだが、ガンガン攻めても意外によく走る。ただ、ある程度以上ペースを上げると、バネ上のボディコンロールが怪しくなるし、サスペンションも底付き気味になる。
もともと街乗りや一般道主体のセッティングだから、サーキット特有の厳しい入力が続くと対応が追いつかなくなり、ある時点でクルマの動きに一貫性がなくなって修正舵が増えるのだ。
まぁ、こういう暴れた状態でもサーキットに慣れた人ならコントロールは容易で、いわゆる「振り回した走り」を楽しむのは可能なのだが、ハンドリングにもうちょい「フトコロの深さ」があればビギナーでもずっと乗りやすいはずで、その辺がちょっと物足りないところではある。
ここから、フロントバンパーのみノーマルのフリード Modulo Xに乗り換えると、まさに「これこれ、こういう感じで走ってほしいんだよねぇ」という足に仕上がっているのが嬉しい。
最初のコーナーから操舵フィールがすっきりクリアになったことに「オッ!」と思うし、ロール速度が適切に制御されているからターンインでの安心感も大。ステアリングを切る、じわっと前輪に荷重を乗せて旋回、加速しながらコーナーを脱出する。
この一連のつながりがスムーズで、ノーマルよりだいぶ高い速度レンジまでハンドリングに安定感があるし、ボディの動きにも予測可能な一貫性がある。
こういう走りの違いについて、「でも、サーキットとか攻めないとわからないんでしょ?」という疑問をいだく方もいるかもしれないが、実はそんなことはない。よっぽど鈍感な人でも、その違いはハッキリと体感できる。
それを確認したのが、今回の試乗イベントで用意されていた特設ゾーンでの走りだ。
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