■開発者渾身の特設コースで足回りを徹底チェック
今回の試乗は単なるサーキットアタックではなく、1コーナー手前には散水したウェット路面、5コーナーから始まるインフィールドにはパイロンで道幅を絞ったゾーン、最終コーナー手前にはラバーブロックで段差乗り越えをシミュレートするセクションなど、さまざまな「仕掛け」を設定。
日常スピードにおける体感性能の違いをチェックできるような工夫が凝らされていた。ドライのストレートからセミウェット状態の1コーナーに飛び込めば、ノーマルもModulo Xも同じように滑る。一般道に置き換えると、先の見えないコーナーに入って行ったら路面が濡れていた、というシチュエーションだ。
こういう場面での典型的なアクションは、最初アンダーステアではらんだ後、アクセルを絞りつつステアリングを切り増す操作。だいたい、タックイン気味にリアがブレークすることになる。
まず「へぇ!」だったのは、このシチュエーションでの挙動がずっとマイルドだったこと。まったくリアが滑らないわけではないが、ゆっくり始まって収束も穏やか。一般道でこういう状況におちいった時、ビギナーは半ばパニックになっているわけだから、その差は小さくない。
5コーナーからはじまるパイロンゾーンも興味深かった。5コーナーの進入速度はふつう100km/hオーバーだが、途中から急にパイロンで絞られてコース道なりの走行を強いられる。道幅は3mほど。パイロンを倒さずに抜けるには、せいぜい60km/hが限界だ。
減速しながら狙ったラインにクルマを正確に載せるには、座りのいい安定した操舵感が必須だし、曲率の変化する狭いコーナーでパイロンとの間隔を維持するには、微小舵角でもきちんと反応する正確なレスポンスが重要。
相反しがちなこの二つの特性が、Modulo Xではノーマルよりずっと高次元で両立しているのが素晴らしい。
段差乗り越えについては、ノーマルよりバネレートとダンパー減衰力を高めているModulo Xにとって不利なセクションだが、低速域では若干そのネガを感じるものの、速度を上げるほど減衰性の良さがプラスに働いて、むしろスムーズに段差を通過できる印象。日常領域の乗り心地に関しても、相当配慮したセッティングであることを実感できた。
最後は、新しい空力処理を施したフロントバンパー装備のフリード Modulo X 最新コンプリートモデルの試乗だ。
フロントバンパーに追加された空力デバイスは、フロントサイドに追加されたエアロフィン、車体下面に流れるエアを制御するエアロスロープ、そして前輪に当たるエアにエネルギーを与えるためのボーテックスジェネレータ(エアロボトムフィン)の3つ。
レース用空力デバイスのような派手さはないが、数値解析や風洞試験によってきちんと効果を確認したデザインだ。このエアロバンパーでぼくが感じた効果は、最終コーナーからストレートにかけてのフロントの落ち着きの差だ。
とくに、最終コーナーをタイヤのグリップ限界いっぱいまで攻めた時のステアリングへの手応えと、そこからストレートを全開で抜ける直進性の安定感。短い試乗時間で確認できたのはこの2点だ。
空力による影響は、よく知られているとおり速度の二乗に比例する。つまり、速度が2倍になれば効果は4倍。逆に、速度が半分になれば、その効果は4分の1となる。
そういう意味で、Modulo Xとノーマルの差は、サスペンションが8割、エアロバンパーが2割、といった印象。たぶん、40km/hでも空力効果は着実に機能しているのだろうが、速度レンジが100km/hレベルまで上がってこないと、なかなか明確な違いを感じるのは難しかったというのが正直な感想だ。
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