■5のイメージを崩さないスタイリング
ルノー5ターボの構成は、純粋なレーシングカーに近い。キャビンは量産車のものを使うが、そこからスペースフレームを前後に出し、それにサスペンション(むろん多くはダブルウィッシュボーンである)を取り付けるというものだ。
だから、ルノー5ターボは何もルノーの大量生産車、ルノー5の姿を借りずとも成立した。もっとスリークで低い、いわゆるスポーツカーであるランチア・ラリーのようなスタイルも採れたのである。
しかし、このクルマのプロデューサーはエンジニアリングのほうもたいしたものなら、クルマに対するセンスもすばらしかった。この高性能ミドシップカーにフランス人の足とも言えるボディスタイルを与えたのである。
このアイディアが、このクルマを成功させたと言っていい。ルノー5のカタチをした200km/hカーなのだ。実際にルノー5ターボのスタイルは本当にいい。
何よりオーバーフェンダーが凄い。空力性能はさぞ悪いことだろう。オーバーフェンダーもここまでやると迫力が増す。ポルシェ・ターボと同じ手法だ。
全幅はなんと1750mmだから3ナンバーとなる。オリジナルのボディパーツはグリーンハウスぐらいだろうが、スタイリストは見事にルノー5のイメージを出している。
ところでルノー5ターボには、シリーズⅡ(ターボ2)もあるが、圧倒的にシリーズⅠがいい。
シリーズIIの内装はルノー5アルピーヌと同じになったが、シリーズⅠの内装は、イタリアの有名なデザイナー、マリオ・ベリーニが担当しているから、それは見事な内装なのである。
■乗り味は純粋なレーシングカーだ
エンジンは4シリンダーで排気量はわずかに1397cc。これにギャレット製のインタークーラーターボを装着し、最高出力は160馬力、最大トルクは21.4kgmというビッグパワーを得ている。
ウェイトは920kgだから、その加速は目覚ましく、メーカー公表値で0~100km/h加速は6.9秒、最高速は200km/hを誇る。数字だけなら国産車も届くが、フィールがまったく違う。
ルノー5ターボの加速感はスポーツカーそのもの、特にサードギアでの90km/hあたりから130km/hぐらいの加速は、それこそドライバーの思うがまま、スロットルペダルとエンジンが直結し、しかもドライバーはそのエンジンにまたがっているごときフィーリングである。
そして条件さえ許せば、最高速度の200km/hはいつでも手に入れることができる。
ハンドリングはこのクルマの最大のハイライトである。このクルマはもちろんミドシップであり、その持ち味を最大限生かしている。
リミテッドスリップディフを効かせてのいわゆるカウンタースティアは自在なのだが、それより、ターンインのノーズの振り方に私はしびれてしまう。
おそらくファン・トゥ・ドライブという点ではこれほどのクルマはそうあるまい。このクルマを一日駆ることは、紛れもない〝スポーツ〟である。
室内は狭く、背中にはエンジンがうなっているのだから、実用性はほとんどない。でも、それでいいじゃないか、この何もかも可愛く、かつかっこよく、しかも速く、楽しいクルマなのだから。
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