■まるでCクラスのような扱いやすさ
まずは街中をドライブ。
意外なことに運転がとてもし易い。機敏な動きをみせるので、思わず巨大なロングボディであることを忘れさせてくれる。まるでCクラスを操っているような感覚に陥る。
もちろん、新型Sクラスのロングボディは、全長5290mm×全幅1920mm×全高1505mmと超デカい。先代ロングと比較しても、全長が+35mm、全幅が+20mm、全高が+10mmと一回りも大きくなっている。
この扱いやすさを生むの秘密兵器が、後輪操舵機構「リヤアクスルステアリング」だ。これは60km/h以下では後輪を前輪と逆方向に、60km/h以上では同方向に後輪を操舵。これにより街中での小回り性を高める。
また視覚的な効果として、包まれ感のあるコクピットデザインや鼻先まで見えるアイポイントの良さなどの相乗効果もある。ビジネスシーンでも熱い信頼を得ているのは、そんなドライバーへの配慮も大きいのだろう。
高速走行時は、大海原を進むクルーザーのようなゆったりとした乗り心地を実現。エアサスペンションを路面状況に合わせて細かく調整を行ってくれるが、ちょっと演出感も強く思える。
もっと色々な道を走り、そのキャラクターを知りたくなった。この辺も熟成が進むと面白みもありそうだ。高級車に求められる静粛性だが、街中から高速を含め、すこぶる高い。
そのため、滑らかな回転フィールを持つ6気筒ターボエンジンの主張もかなり控えめとなり、寂しいくらい。個人的には、もう少し自慢の6気筒サウンドを楽しませて欲しいと思うほどだ。435ps/520Nmのエンジンが生む加速力は鋭いが、姿勢制御により実際の加速よりもクルマの動きは緩やかであった。
せっかくなので後席にも試乗。
ロングのオーナーが最も好むと思われるポジションだ。シートは標準状態でも体を預けるような姿勢。まるでラウンジのソファーに体を預け、くつろいでいるような感覚だ。
試乗車は、フットレスト付エグゼクティブリヤシートを装備。これは助手席が前に倒れ、スペースを確保。後席の大きくリクライニングし、レッグレストが競りあがることで仮眠も可能なシートポジションを作り出すもの。まさに自動車のファーストクラスシートである。
アームレストに格納されたタブレッドを使えば、リラックスした姿勢のまま、インフォテイメントシステムなどの車内装備を操ることが出来るので、まさに至れり尽くせりな空間だ。
■新機能盛り沢山でデジタル感アップ
Sクラスの新機能も合わせて紹介したい。
まずは進化したARナビゲーションシステムだ。新型のシステムの特徴は、ナビ画面だけでなく、ヘッドアップディスプレイにもAR表示が可能となったこと。
中央の大型タッチスクリーンでは前方のカメラ映像の中に、AR表示で進行方向が示されるが、ヘッドアップディスプレイ内には進行方向のみが示させる。そのため、AR機能による進行方向の理解度がより高められている。
またメーターパネルも、フル液晶であることは同様だが、3次元表示が可能に。フラットなパネルだが、メカニカルなアナログメーターのような立体的に感じられる。
またデジタル表示では、情報の優先度により表示を切り替え、直感的な理解をサポートする。安全面では、後席用エアバックの採用も大きなトピックだ。
劇的な進化が図られたSクラスは、先代と比べると、ドイツ車らしいアナログ的な魅力は薄れ、デザインとメカニカルの両面でデジタル感が強くなった。
この感覚は、次なる電動車のフラッグシップ「EQS」の味わいを先取りしたようにも思え、未来のメルセデスの在り方を想像させてくれる。まさに時代の最先端を切り開くメルセデスのフラッグシップに相応しいキャラクターといえる。
その一方で、直6主体とするパワートレインを活かしたアナログ風味も味わえるモードがあっても良いのではとも感じた。
それはオールドファッションには違いないが、精密な機械式時計を彷彿させるメルセデスの味も、最新式ではどう表現できるのだろうかと好奇心が刺激されたのも本音だ。
未来のメルセデスの形を提案してくれた新生Sクラスをメルセデス・ベンツが、今後、どのように熟成させていくのかも注目したい。





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