14代目クラウンはベンツ BMWを蹴散らしたのか? 走りの進化は歴代最高! 注目のハイブリッド試乗プレイバック

14代目クラウンはベンツ BMWを蹴散らしたのか? 走りの進化は歴代最高! 注目のハイブリッド試乗プレイバック

 14代目クラウンが評判だ。強烈なデザインを与えられたフロントマスクも、見慣れれば立派な個性に見えてくる。クラウンらしい高級感はあるのか? 注目のハイブリッドの走りはどうか? 富士スピードウェイで試乗し、国内外のライバルと比べた。(本稿は「ベストカー」2013年3月10日号に掲載した記事の再録版となります)

TEXT/国沢光宏、竹平素信
PHOTO/中里慎一郎

■旧型HVとは別モノになった 新型は驚きがいっぱい!

2.5ハイブリッドアスリートG(543万円)。旧型クラウンHVを100とすると新型クラウンHVは加速フィール70/ハンドリング90/乗り心地110/燃費120/居住性100/インテリアの質感110/総合点150!
2.5ハイブリッドアスリートG(543万円)。旧型クラウンHVを100とすると新型クラウンHVは加速フィール70/ハンドリング90/乗り心地110/燃費120/居住性100/インテリアの質感110/総合点150!

(TEXT/国沢光宏)

 何から書いたらいいのか迷うくらい情報が多い。

 まずプリウスを知っている人なら、動力性能やハイブリッドシステムについちゃこれといった特徴なし。絶対的な動力性能を含め、プリウスそっくりである。

「モーターのパワーで走り出し、やがてエンジンかかり、モーターとエンジンの効率のよいトコロを使って走る。アクセル戻したり、ブレーキ踏んだら走行エネルギーで発電機を稼働させ、電気を蓄える」というパターンです。

 先代のクラウンHVは基本的に3.5L V6のエンジンパワーで走るコンセプトだった。しかし、新型クラウンHVに乗るとモーターの存在を強く感じます。これこそトヨタ式ハイブリッド本来の姿なんだと思う。

 絶対的な性能を求める人からすれば「先代より遅くなった」になるかもしれないけれど、私は「先代よりずっと知的になりましたね」と評価しておく。

右が旧型クラウンロイヤル、左が同じハイブリッド車のカムリ。比べると新型クラウンが新鮮だ
右が旧型クラウンロイヤル、左が同じハイブリッド車のカムリ。比べると新型クラウンが新鮮だ

■高く評価したいHV専用エンジン

FR専用のハイブリッドシステムを採用。次世代D4-S採用ながらレギュラー仕様としている
FR専用のハイブリッドシステムを採用。次世代D4-S採用ながらレギュラー仕様としている

 すばらしいのはエンジンである。なんと最大熱効率38.5%ときた! こらもうよくできたディーゼルエンジンの熱効率すら大きくしのぐ。

 もちろん全回転域&すべての負荷領域で38.5%を達成しているのでなく、一定の条件である。けれどハイブリッドなので最大効率に限りなく近い回転域と負荷で使っているからすばらしい!

 加えてプリウスと同じく、180km/hまで全域完全燃焼となるストイキ(理想空燃比)制御だという。180km/h巡航してもディーゼルエンジンと真っ向勝負できる燃費なのだった。

 驚くべきはリッターあたりの出力で、なんと普通のエンジンと遜色のない71馬力である。「凄い!」としか言いようがありません。

 というのもプリウスに搭載される1.8L、4気筒の熱効率もクラウンHV用とほぼ同じだけれど、リッターあたりの出力は55馬力しかない。担当者によれば「トヨタで初めてのハイブリッド専用設計です」。プリウス用はどうか聞いたら、汎用エンジンの改良版だとか。

 ちなみにSKYACTIV-Gのリッターあたり出力は1.3Lが65馬力、2Lで77馬力。クラウンHVの2.5Lは前述のとおり71馬力。これはガソリンエンジンの常識をブチ破るくらい凄いこと。

富士スピードウェイの構内を飛ばしても15~16km/Lと期待通り燃費はいい
富士スピードウェイの構内を飛ばしても15~16km/Lと期待通り燃費はいい
丸形2灯になるアスリートのリアコンビネーションランプ
丸形2灯になるアスリートのリアコンビネーションランプ

 クラウンHVのエンジンをディーゼルに置き換えても燃費よくならない、ということ。ご愛敬なのが騒音と振動。相当頑張ったらしいが、プリウスの1.8Lと変わらず。エンジンかかったらハッキリ「かかりましたね」とわかる。

 絶対的な動力性能もプリウスと大差なし。もちろんフル加速状態になったらシステム出力(エンジンパワー+バッテリーの電力で使えるシステム出力)220馬力のクラウンのほうが、136馬力のプリウスをしのぐ。けれど街中で走っている状況だと「プリウスより明確に速い」という感覚なし。

 考えてみれば車重300kg近く重く(おおよそ20%)、加えてモーターの純粋なサポートパワーはバッテリー出力の関係でプリウスと同等。そもそもプリウスだって街中ならけっこうパワフルだ。

 気になる燃費は、通常の2.5Lが9km/Lくらいのデータを出す走り方をして15km/L前後。先代のクラウンHVより確実に20%以上いい感じ。

 どの速度域でも丁寧なブレーキングをすれば、コンスタントにいい燃費を出せ、反対に強くブレーキをかける乗り方だと、15km/Lに届かない。

バッテリーをコンパクト化し旧型比+86Lの450Lを確保
バッテリーをコンパクト化し旧型比+86Lの450Lを確保

 FR車なので回生制動を大きくかけられないのだった(後輪だけにブレーキかかる)。プリウスでいい燃費を出せるなら、クラウンHVでもフルに性能を引き出せるはずだ。

 2.5Lの普通のエンジンと比べ90kgほど重くなっているHV車の乗り心地とハンドリングはどうか?

 結論から書くと「変わらず」。若干違うのかもしれないけれど、富士スピードウェイの移動路で試乗(といっても一周10kmくらいある)した限り、大きな違いを感じなかった。

 ただ試乗日は外気温が超低かったためか、暖まるまでハンドル切った時に前輪が外側に流れる傾向。もちろん通常の走り方だとまったく気にならないけれど、緊急避難操作をするような時は少し不安かもしれない。

 百歩譲って燃費を重視した低転がりタイヤを履いているなら、こういう特性であっても納得する。けれど足回りの開発担当によれば「プリウスなら話は違うでしょうけれど、クラウンなのでHVといえども転がり抵抗重視というタイヤを選ぶようなことはしていません!」と強く主張しているのだった。

 個人的にはHVに限り、もう少しECOなタイヤを選んだらいいと考えます。あれだけエンジン効率で頑張ってますから。

 タイヤはロイヤルが標準で16インチ。アスリート同17インチで、それぞれ1インチ大きいタイプをメーカーオプションしている。

 当然のごとくタイヤ径が大きくなれば乗り心地も悪化していく。路面の継ぎ目のような段差を通過すると、少しキツめの「ドシン&ワナワナ感」を出す。通常は乗り心地がいいだけにもったいないと思った。

 個人的な「う~ん!」は3つ。

 まず「全方位衝突安全ボディ」と言っているが、アメリカで始まった25%オフセット衝突試験については「国内専用車なので検討したこともありません」。

 また、今や当たり前のような装備になった停止車両への追突事故低減ブレーキも、停車機能は持っていない。

 あくまでドライバーがブレーキを踏まないとダメ。さらにベースグレードは盗難防止アラームを廃止してしまったことに疑問を感じます。クラウンHVはトヨタのフラッグシップなのだから、最善を尽くしてほしかった。

3.5アスリートS(497万円)。旧型クラウン3.5アスリートを100とすると新型は110点。切れのいい加速フィールを楽しみたいならばアスリートのV6、3.5Lだ。モリゾウ氏もいたく気に入ったとか
3.5アスリートS(497万円)。旧型クラウン3.5アスリートを100とすると新型は110点。切れのいい加速フィールを楽しみたいならばアスリートのV6、3.5Lだ。モリゾウ氏もいたく気に入ったとか

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