今年2月、本国で6年ぶりとなるフルモデルチェンジを果たしたメルセデス・ベンツ Aクラス。日本での導入は今年8月と見られているが、一足早く試乗レポートが届いた。
先代Aクラスには苦い記憶がある。
古くからのファンにとって、メルセデスといえば「熟成と高い完成度」という価値観で語られることが多いはずだが、その最小カテゴリーであるAクラスは、まだその領域には達していない、ライバル車の筆頭であるVWゴルフの後塵を拝した、といったイメージを抱かれることとなってしまったのだ。
新しいAクラスは、タッチパネルと音声認識を兼ね備えた新しいインターフェースシステム「MBUX」の導入をはじめ、先代からの著しい進化が随所に見られる。そこには、すべてのライバルたちを(そしてもちろんVWゴルフを!)出し抜かんとする、強い決意が表れているようにも映る。
果たして、今回はどちらに軍配があがるだろうか。なお価格はA200の約3万ユーロ(約393万円、19%の付加価値税込み)からとなっている。
文:渡辺 敏史
写真:ベストカーWeb編集部
初出:『ベストカー』2018年6月26日号
■6年ぶりの登場。VWゴルフは超えられたのか?
メルセデスが初代AクラスでFFレイアウトを手がけ始めてから20年余の時が経つ。1~2代目はパワートレーンの多様化にも対応できるサンドイッチ構造のプラットフォームにレイダウンマウントのエンジンを組み合わせるという特殊なパッケージが話題を呼んだが、時が早すぎたこともあり、その思惑が充分に活かされることはなかった。
ダイムラーの拡大戦略に則ってFFプラットフォームは、多車種展開の容易な拡張性重視のMFA1へと改められ、3代目AクラスはオーソドックスなFFパッケージのモデルとして生まれ変わる。並行してCLAクラスやGLAクラスといった派生車種が登場するなか、Aクラスはど真んなかのCセグメントハッチバックという位置づけではあるものの、今にして思えばローフォルムでスポーティなキャラクターを前面に押し出し、ユーティリティ重視のBクラスとの両面からVWゴルフを挟み撃ちにしようという戦略だったのだろう。
この新世代のFF戦略は奏功し、ダイムラーの年間販売台数を200万台超の規模まで押し上げるのに大きな貢献を果たした。その間、ダイムラーはルノー日産との業務提携も締結しており、Cセグメント系モデルは当然その範疇に含まれることになる。
これらの背景を踏まえて登場した新型Aクラス、そのプラットフォームはMFA2へと進化している。すでにMFA1のアーキテクチャーをインフィニティで採用しているルノー日産との生産的融通を高めただけでなく、剛性レベルは前型比で30%近く向上、そして大きな変化としてはグレードに応じてリアサスにトーションビームとマルチリンクの使い分けが可能となった。これは単に生産性やコストの問題だけでなく、将来の電動化にまつわる搭載物のスペースを稼ぎ出す上でも重要なポイントとなってくるはずだ。ちなみに前型では2つのアクスルを持っていたフロントサスは一本化されている。
■Sクラス、Eクラス譲りのインパネ
新型Aクラスの車格は全幅こそ1796mmに留められるが、全長やホイールベースが伸長、ゴルフに対してはひと回り長い体躯となった。そのぶん室内は席間空間や荷室容量に改善がみられるだけでなく、ピラー形状や配置の見直しにより死角を低減、開放的な空間を構成している。
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