2012年末、日本市場では久々の国産ディーゼルセダンの登場となったマツダ 3代目アテンザ。約7割近く売れているというディーゼルは本当に“買い”のクルマなのか? 鹿児島を中心に500kmにわたって走るロングドライブテストを行なってみた!(本稿は「ベストカー」2013年5月10日号に掲載した記事の再録版となります)
文:竹平素信/撮影:平野 学/撮影地・錦江高原ホテル
■圧倒的なパフォーマンスをみせるディーゼルに対しガソリンは?
予想をはるかに上回る大人気のアテンザだが、そのワケはディーゼルモデルにあると思う。
このエンジン、昨年登場したCX-5で初デビューとなった2.2Lクリーンディーゼルでパワーと燃費を両立したうえにフィールが上質とあって、一気に注目されたものだ。
この国産最高のディーゼルがアテンザの魅力を高めたのはいうまでもない。販売数の約7割がディーゼルなのはそのれっきとした証なのだ。
アテンザはディーゼルか、ガソリンか。そりゃあディーゼルだろう!! ということになりそうだが、ちょっと待て、だ。
ディーゼルはパワフルながら低燃費。燃料代もガソリンより安い。これはエコ時代にあって、大きな魅力であることは間違いない。
しかし、ガソリンだって長所はある。アテンザには2.5Lのガソリン25Sもあるが、今回は走りの楽しさ、価格のメリットという点で20Sをチョイス。
ディーゼルの標準モデル、2.2XDに対し、2Lガソリンの20Sなら40万円(税込)も安い。このクラスでこの価格差はかなり大きいハズだ。
ディーゼルはランニングコストを考えれば10万kmくらい走れば元がとれる計算になるが、そこまで先行投資する気になるかどうか。さらにガソリンエンジンならではのフィールのよさも魅力ではないか。
ということでディーゼルか、ガソリンかを検証すべく、ロングドライブでじっくり乗り比べてみた。ガソリンは20S、ディーゼルはXDだ。
2Lガソリン、このエンジンの仕上がりはなかなかいい。
166ps/20.0kgmのパワースペックもライバルにヒケをとらないばかりか実力もハイレベルだ。低速からトルクフルで回すほどにしっかりとパワーが盛り上がってくる。
試乗中は常に3名乗車(そのうち1名は100kg級)だったが、フツーの走りなら不足なしの動力性能を発揮した。
1430kgの車重で2Lでは非力かな、と予想したもののいい意味で期待は裏切られたのだ。とはいえ、余裕があるほどではない。登り坂や高速道路での追い越しなどでもう少しパワーが欲しいと感じさせることも確か。
ガソリン、NAならではのレスポンス、リニアな回転フィールも気持ちよい。このあたりはディーゼルにハッキリと勝るポイントだ。
高回転でサウンドがけっこう高まるが、これもノイジーではなく、むしろスポーティなフィール。
2Lガソリン、上等ではないか、と感じさせたのだ。
■乗り心地を優先するなら17インチ
2.2Lのクリーンディーゼル。こいつのパワーはすばらしい。
175ps/42.8kgmは2Lガソリンに比べ、トルクがなんと2倍以上。車重は1510kgと重たいが、余裕はタップリ。
2Lガソリンで不満があった登り坂、高速道路もラクチンそのもの。正直いって圧倒的な動力性能差を見せつけてくれた。というか、ディーゼルのパフォーマンスが素晴らしかったワケだ。
さらにディーゼルではうるさい、回転フィールが重々しい、といったイメージもまったくなく、ホントにディーゼルなの?と思わせるナイスフィール。
アイドリング時こそわずかだがディーゼルだな、と感じさせる音振があるものの、走行中はほとんど感じさせないし、静粛性はガソリンより高い。これはちょっとした驚きだった。
また、ガソリンには及ばないが、軽快でスムーズな吹け上がりはディーゼルらしからぬフィール。
じっくり乗るほどにディーゼルのよさを感じた。比較してしまうと買うならディーゼル、と思うのは当然だろう。
ディーゼルとガソリン、走りの違いはエンジンだけではない。走りはエンジンの重量差に起因するものでステージによって違いを見せた。
高速道路ではフロントが重いディーゼルがいい。ステアリングのズッシリ感が強く、直進安定性も高い。ディーゼルのビッグトルクもあって安心した高速ドライブが楽しめよう。
一般道ではフロント部が軽いガソリンのほうがやや走りやすい。ノーズの動きが軽快だからフツーの走りなら、よりスムーズな走りが楽しめよう。パワーの立ち上がりもディーゼルより穏やかなのでスムーズな走りにつながるのだ。
ワインディングではさすがにガソリンが楽しい。フロントが軽く、その分前後重量配分が均等になるので軽快で一体感の高いハンドリングを見せてくれる。よりオン・ザ・レール感覚のスポーティな走りが楽しめる、というわけだ。
とはいえ、どのステージも大きな違いがあるワケではない。もともとシャシー性能が高いアテンザゆえに欠点とするほどの差はない。
2種類設定されたタイヤによる走りの違いはけっこう大きかった。
高価だが見ばえがよく、ついチョイスしたくなるのは19インチ。走ってのメリットはステアリングのダイレクト感が高く、コーナーリング性能が優れていること。
スポーティな走りを望むなら19インチで正解だ。そのいっぽうで市街地や低速走行ではゴツゴツした固めの乗り心地が気になる。走りと乗り心地を含め、19インチはややオーバーサイズ感が強い。
いっぽう17インチはどうか。メリットは乗り心地で市街地や一般道での快適さが光る。サスチューンは19インチも17インチも同じだから乗り心地はタイヤの違いだけ。コーナーリング性能が不足するレベルではない。
たしかに19インチとの差はハッキリと感じさせるが、これで充分、といったレベルだ。ワインディングはむしろ17インチのほうがよさそうだった。限界の把握もしやすかった。
さてさて、ディーゼルかガソリンかで正直いってワシを大いに悩ませる。乗り比べての答えはディーゼルが確かに魅力的だ。
余裕あふれるディーゼルパワーはなんともすばらしいし、フィールもこれまでのディーゼルのイヤなイメージが払拭されている。
今回、せっかくのロングドライブということで燃費もチェックしてみたところ、ディーゼルは一般道で10.7km/L、高速道路で16.8km/Lという数字をマーク。
いっぽうガソリンはそれぞれ9.8km/L、11.8km/Lだった。一般道がどちらも悪かったのはワインディングでペースアップしたためだった。
ここまでの答えを出すなら、やっぱりディーゼルがよし。燃費も格段にいい。しかも、軽油はガソリンより安い。車両の価格差、40万円は10万kmくらい走らないと元はとれないが、パワフルな走りが日常で楽しめるとなればそれもOKという気になろう。
アテンザユーザーの約7割がディーゼルをチョイスするのも大いに納得である。
ということで、イチオシはディーゼルだが、ガソリンもオススメしたい。実用上は充分のパフォーマンスだし、エンジン以外のアテンザそのものの走りもすばらしいから満足度はとても高いと思うのだ。
価格差40万円の出費が苦しいのならガソリンをチョイス。これも正しいゾ。
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