■トライトンの勝因は圧倒的な耐久性
BC:まずはおめでとうございます。小さく産んで大きく育てるとおっしゃってましたけど、すごい育っちゃいましたね。
増岡:ありがとうございます。でもねぇ、来年に向けてハードルがすごい高くなっちゃったなーというのが本音。正直、今年は3位以内に入れば十分という気持ちだったんです。ご覧いただければわかるとおり、クルマは95%くらい市販ノーマルだったんだけど、素材の良さが助けてくれた。
BC:富士ヶ嶺で話を伺った際、十勝で徹底的にテストしたから、耐久性には自信があるとおっしゃってました。そのとおりの結果が出てますね。
増岡:ノントラブル、メカも含めてノーミス、まったくタイムロスなくゴールまで行けたのが勝因でした。SS2は全長203kmとこのラリー最長なんですが、チャヤポン選手はここで圧倒的なトップタイムを記録。そのリードを最後まで守りきった。終わってみればトップを取ったのはSS2だけだったんですが、追いかけてくるライバルはSSトップを取る速さはあるものの、それが続かなくてトラブルで後退という状況でした。
BC:監督としては、逃げる立場になるとハラハラしたんじゃないですか?
増岡:毎朝ミーティングで「今日も落ち着いていこう、100%集中して余計なことを考えず自分のペースで走れ」と、ドライバーに言い含めましたね。クルマがサービスに帰ってきてメンテナンスが終わるのが毎日深夜になるんですが、それをボク自身がテスト走行して最終チェックしてた。最終日の前日くらいに「これは勝てるな」と確信しました。魂がこもってるからクルマの状態が良かった(笑)。
BC:AXCRはもう27回もやっていて、アジアでいちばん歴史があって大きなラリー。アマチュアチームにとっては、ここにエントリーするのが目標という権威あるイベントです。そこでの優勝は新生ラリーアートにとって非常に大きい成果じゃないですか?
増岡:ラリーは身近なクルマがみんなが使う生活道路を走りますよね。これは欧州中心のWRCでも同じなんですが、たくさん売れるクルマのプロモーション効果が大きい。
BC:F1と違って競技車と市販車が直結してますからねぇ。
増岡:アジアはご存知のとおり三菱にとってもっとも重要な市場。新生ラリーアートが盛り上がるのはここからだと思っています。
■ラリーが電動化されたらPHEV技術が活きる!
BC:ちょっと気が早いかもしれませんが、その先の将来構想についてはいかがですか?
増岡:具体的な話はまったくないから、あくまで原則論だけど、たとえばターマック系のラリーに発展して行くとすれば、将来的に電動化は不可避でしょうね。
BC:すでにWRCのWR1カーはハイブリッド化されてますし、FIAはフル電動のラリー5eというカテゴリーも考えているようです。
増岡:個人的には、公道を走るというラリーの性格からいって、ラリー車の電動化にはPHEVがもっとも適していると思ってます。
BC:コンセントレーションランは電動で走り、SSでは内燃機関も使ってパワフルにタイムアタックとか。カーボンニュートラル的にも望ましいですね。
増岡:まだ先の話ですが、将来はそういう環境を考慮した競技形態にシフトしてゆく可能性はあると思ってます。
BC:そこで三菱独自の技術が光るのが、アウトランダーPHEVのS-AWCですね。
増岡:前後ともモーター駆動にすると、トルク配分を自由自在、しかも精密に制御できる。三菱4WDのコンセプトは、4つの車輪を対角線で結んで交わる点、そこを中心にクルマが旋回するように4輪のトルク制御やブレーキ制御をきめ細かくやるのが特徴。コントロールしやすく、滑りやすい路面でもドライバーが望むラインを安全にトレースできるように考えられています。
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